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紙の月のyumeayuのレビュー・感想・評価

紙の月(2014年製作の映画)
3.5
"ラッパを吹き鳴らすな"

直木賞作家、角田光代の同名長編小説を映画化した今作。
ごく普通の主婦が起こした巨額横領事件。
真っ当な人生を送っていたはずの主婦が、なぜ犯罪に手を染めたのか…。

宮沢りえ演じる主人公の梨花は、一見すると何不自由のない人生を送っているようだが、実は心の奥底では満たされない日々を過ごしていた。
ほんの出来心から始まった横領はどんどんとエスカレートし、年下の青年との不倫関係も深まる一方だった。
しかし、描かれていたのは"年下の男に貢いで転落していく女"という単純なものではなかった。

彼女の根底にある想いは、ただ"認められたい"という切なる願いだった。
これは彼女が幼少期に通っていたカトリック系学校で教えられた「受けるより与える方が幸いである」という言葉に影響されているのだが、彼女が勘違いしてしまっていたのは、その行為に浸り、自らの欲望を満たしてしまっていたことだろう。

要するに困っている人に施しを与えることが、彼女にとっての絶対的な正義であり、そのために横領をすることは悪ではないという考えがあるようだった。

一見、普通の主婦ながらも、本質的にはサイコパス気質だった梨花。
演じた宮沢りえのどこか現実離れした雰囲気がとてもキャラクターにマッチしていた。

また、彼女と対極の存在として描かれていた、銀行のお局役を演じた小林聡美も抜群の存在感だった。
ああいう細かいオバさんいるよね。
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