木曳野皐

紙の月の木曳野皐のレビュー・感想・評価

紙の月(2014年製作の映画)
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お金と愛の均衡は保てない。
これが私の答えでした。
与えれば与えられるほど、他人の好意に寄りかかる人間が出来上がり、求めれば求めるほどそれは自己愛で自己満足的な働きをしてしまう。横領を題材にした話ではあるけれど、私は登場する“愛”や“好意”、そしてセックスでの身体的な満足を得る“行為”などについて考えてしまったのです。
「何も変わらないから」と強く言うのは、「何も変わらないでね」と相手に強要しているのと同意では無いのかと思う。
最初から壊れるものだと分かっていたとしても縋りついてしまうのは、やはり人間の持つ孤独や寂しさからなのだと思った。
「綺麗ですね、偽物なのに」
と言う言葉から考えたのは、“この人は本当に本物を求めていたのか”という疑問でした。「偽物だったら壊してもいいし捨ててもいい」だなんて言ってるくらいだから、きっと偽物で十分だったのでは…と少し思うのです。
誰も皆、本物が欲しい。でも手に入らないから偽物でも満足しようとする。その結果がコレだった。“横領”じゃないとしても、誰にでも起こり得る不幸なのだと私は思う。

“悪い事をしている”“今私は幸せだ”“今は不幸だ”という認識をBGMだけでこちら側に分からせる技術は凄いと思った。BGMのお陰で分かりやすいと言っても過言では無いんじゃないかなぁ。

宮沢りえって勿論凄く綺麗でそれだけで魅力的な女性なんだけど、何処か人を惹き付ける魅力があると思ってて、それはこの人の“声”にあるのかなって思った。宮沢りえの儚さと言うか綺麗だけど脆い感じがなんともハマり役。
池松壮亮の演技が圧巻。
「普通の大学生」これに尽きる。
やはりあんな生活を与えられたら寄りかかりたくなるのは人の性。明らかにえっちな池松壮亮もそれはそれで好きなんだけど、こういう地味で冴えなくて普通の男の子もやっぱり良い。こうやって日常を演じられる俳優さんって凄い。
木曳野皐

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