ふみぃぃeeeee

紙の月のふみぃぃeeeeeのレビュー・感想・評価

紙の月(2014年製作の映画)
4.0

 綺麗だったら、偽物でも良い。本作はこの価値観を提示していて、個人的にすごく考えさせられた。

 
 主人公の行動は普通は駄目。しかし、絶対に駄目なことなのかと問われると必ずしもそうだとは言えない不思議な感覚になる映画的体験。『母なる証明』を観終わった後のような気持ちにすごく近かった。
 

 横領の手口のディテールが細かく、ノワールとしての完成度が高いし、徐々に明らかになってくる彼女の価値観を形成した原体験が個人的にすごく腑に落ちる。


 なにより破滅へと向かう人間の一瞬の輝きの切り取り方がすごくお洒落に感じたし、その後、真っ逆さまに堕ちていく描写の重々しさ。これらのバランスが凄い。
 

 そして、全速力で逃走する場面のカタルシス。大切な物を全て失う悲壮感と今まで、縛られていた物から解放される爽快感。アンビバレンスな感情。そして、無性に羨ましくなる。
 

 最後の場面も素晴らしい。主人公の思いが少し肯定されているように感じるから。すごく、好きな映画だった。


[2021年 77本目]
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