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紙の月のmimocyanのレビュー・感想・評価

紙の月(2014年製作の映画)
3.8
最も美しい横領犯ていうコピーをどこかで見た気がするけど、あれは宮沢りえ自身を指していたようで、華麗さとか、手口の鮮やかさとか、そういうのではなかった模様。予想外に地味~な映画という印象ももったけれど、地に足のついてる作品とも感じられた。
それなりの美貌を持ちつつも、それを自分で発揮できないぱっとしない主婦が陥った不倫と、それにまつわる転落劇。それこそ世間に溢れる「ありがち」な話と一纏めにされそうな事件。
けれど、真に「ありがち」なのは梨花や相川の方ではない。
むしろその周りにこそ、はいて捨てるほどのありふれた平凡が転がっている。ラストの小林聡美の台詞にもかかってくるけど、ありがちと口にすることで、平凡な自分達の領域を守ろうとする大衆の心理と、現実を動かすお金の危ういバランスが、墨のようにダラダラと流れ落ちていく感じが好き。

あっちがわとこっちがわの境界ってどこにある?
少なくとも梨花は、それをお金でしか踏み越えられないって思ったのでしょう。それをただ愚かとするか、どうみるか。
でも、いつかお金に使われる可能性を、誰も否定なんてできないんじゃないかな。
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