寿マーガリン

紙の月の寿マーガリンのレビュー・感想・評価

紙の月(2014年製作の映画)
3.0
世の中には大河ドラマという、視聴率無敵の枠があるというのに、私は生まれてこのかた一度たりとも視聴したことがなかった。

歴史という教科に興味がなかった私に彼は驚愕し、その早きこと風のごとく、【江~姫達の戦国~】をHuluで見せてくれた。
しかも中継解説付きである。かたじけない。そうでもなければきっと見れなかった。ありがとう南蛮の男。

そして、そのドラマの中で【宮沢りえの美しさ】に、小論文でも書けそうな程にグッ!と胸にトキめくものがあり、私はこの映画を手にすることとなる。

西暦2016年の冬の事であった。


紙の月。
どこにでもいるような銀行員の女性が、どこにでもいるような大学生と恋に落ちるのだけど、その派手な交際費はお客様のカネ。

彼を助けてあげたい気持ちが、徐々に私欲にまみれて膨らんでいく。夢を他人の金で買い始めてしまうのだ。

具体的にいうと、スイートルームで高い酒をイチャイチャ飲んだり、高級時計を買ってはしゃいだりイチャイチャしたり、最終的には部屋を買い与えたりイチャイチャする。

けしからん。この嫉妬の質量、富士山の如し。しかし、おカネの与えてくれる快楽を充分に満喫した二人に待ち受けているのは、逮捕などといった世の道理ではなく、浮気による破局という、実にありふれている陳腐な結末であった。完。


宮沢りえの圧倒的な美しさを除いては、ざまーみろとか、ほらな、って思う二人の結末なのだが……

私がグッときたのは、同僚の地味ブスを演じた、小林聡美の放った一言であった。


お金の力によって、やりたいことやりつくし、体験できないようなことを体験しつくしたであろう罪人:宮沢りえに対し、


『私だったら、何するだろう。
やりたいこと、やってみたいことってなんだろう、って考えたら、徹夜くらいしかなかった。』



…………ピュアか?!!?!!?

ピュアなのか?!ピュアなのか?!桐谷美玲より川島海荷よりピュアちゃんか?!その清きこと小林聡美の如しか?!

徹夜……?!

お金で買えないものが、ここにひとつ…なんと美しきことよ!!!

こういう真面目で清い心の持ち主はいつだって地味でブスじゃん?
心の美しさってブスの特権じゃん?でも絶対モテないじゃん?男は『健気で家庭的な子がタイプ』とか言うわりに、一生懸命生きてる地味ブス選ばないじゃん?!心が汚れた不倫罪人の宮沢りえ選ぶじゃん?!結局顔なんだろ!世の中みんなウソ!みんな紙の月!!消えろ!そして不幸になれ、ブードゥー教の呪いでも受けろ、そんでちんこもげろ。金の奴隷になれ、そして捨てられろ……。


私は地味ブス女の美しき心をそっと見守りたい……
そして私自身、世の中を真面目に泳いでいける、正しさと誠実さを持った昭和顔の地味ブスでありたい……。

生まれた顔や容姿は選べない。
私は宮沢りえにはなれない。

それでもいい。いや、よくはないけど我慢する。
欲に負けて犯罪に走らず、泡沫の恋や性欲に溺れて大切なものを見落とすような【クズ】にはならないように生きていきたい。誠実に、人生の駒を進めていきたい……

そして、
もしも高望みを許されるのなら、その誠実さが私の回りの人にも感染して、まっすぐな心で生きていけたらいい。

例え地味でも、目立たなくても、ダサくても、ブスでも
自分の意思で選べるすべての行動が、【正しさ】に属していけますように。