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グレート・ビューティー/追憶のローマのodyssのレビュー・感想・評価

3.0
【人間ドラマは刺身のツマ】

最初のシーンが日本人団体観光客。ふうんと思いながら見ていたのだが、でっかい一眼レフかなんかをかかえた中年男がそこから勝手に移動してカメラを構えて斃れてしまう。説明はない。
ここ、何か違和感がある。今どきの日本人観光客ならあんなでっかい一眼レフじゃなく、小型のデジタルカメラかケータイ付属のカメラで撮るんじゃないか。また、趣味であれ一眼レフで本格的に写真を撮るためにローマに行くなら、団体に加わったりはしないだろう。どこか変。中国人と日本人を取り違えているんじゃないかな。

というふうに始まって、この映画は筋書きらしい筋書きもないままに進む。すでに他のレビュアーも指摘しているように、この映画の主役はローマだ。人間ではない。人間はローマを表現するための手段として出てくるだけ。100歳を超えてアフリカかどこかで貧民のケアをしているという聖女も出てくるけど、ローマというカトリックの本家みたいな街だからこそじゃないかな。

いちおう主役級の老人は、昔付き合っていた美しい恋人を思い出したり、その恋人と結婚した男から、亡き妻は実はあなたのことをずっと想っていたと告げられたりするのだけれど、そこから話がきっちり展開していくのかというと、そうはならない。あくまで人間の物語は刺身のツマなのだ。

都市は人間の右往左往とは無関係に、生き続ける。
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