革芸之介

濡れた欲情 ひらけ!チューリップの革芸之介のレビュー・感想・評価

4.1
天才・神代辰巳の映画作品を何種類かに分類してみると「恋人たちは濡れた」や「赫い髪の女」などの文学的で気怠い青春映画の傑作があり、「女地獄・森は濡れた」や「やくざ観音・情女仁義」などの血が乱れ飛ぶバイオレンスでスプラッターな怪作もあって、幅広い作風が目立つ。

しかし、見逃すことができないのが、神代の喜劇作家として才能であり、「悶絶!!どんでん返し」や「黒薔薇昇天」そして本作「濡れた欲情 ひらけ!チューリップ」などコメディ的要素を多く含んだ傑作もある。

特に「濡れた欲情 ひらけ!チューリップ」のラブコメ的な明るさは見ていて爽快だ。なんとなく「うる星やつら」みたいな感じで、登場人物が叫びまくり、走り回り、芹明香が男をぶん殴り、まわし蹴りするハイテンションが魅力的。

そう、この「叫びまくり」「走り回り」が重要で、ここが神代辰巳の凄いところなのだ。そもそも映画とは何か?それは、動く物体を、そのまま動いているまま記録できるというのが映画というものだ。だから以前もどこかで指摘したが神代作品は乗り物が多く登場し、乗り物の使い方、撮り方が抜群にうまい。おそらく神代も「動く物体」をフィルムに焼き付けたい誘惑に憑りつかれたシネアストなのだろう。

本作も、最大の見せ場として芹明香と安達清康と二条朱実がリアカー屋台を引きながら全力疾走で痴話喧嘩しながら(ちなみに本作の設定で安達清康は、あまり才能のないパチプロで、しかし女にはもてまくりのヤリチンキャラ。なので芹明香と二条朱実と二股してて実際には三股、四股、五股ぐらいのヤリチン。で、芹明香と二条朱実と安達清康が三人で痴話喧嘩しているシークエンス)長回し撮影で躍動感のある、とても馬鹿馬鹿しいけど幸福感溢れる、爽やかな場面が面白いです。

とにかくポップでカラフルで、最後はちょっと泣ける青春ラブコメの傑作です。