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THE DEPTHSのmotoietchikaのレビュー・感想・評価

THE DEPTHS(2010年製作の映画)
3.8
おもしろい。ストーリーの濱口竜介ぽくなさが強烈にある(脚本が別の人だからというのもある)んだけど、写真というフレームのモチーフとか、細部では確実に今の濱口竜介と連続性が見られる。

石田法嗣という身体を撮ってくれたのはうれしい。でもこの後にまた濱口竜介と組むことになる『不気味なものの肌に触れる』のほうが彼の身体性をよく捉えていた気がしないでもない。

物語は2つの流れが交流しながら進む。
一つは友人の結婚式のために日本を訪れている韓国人カメラマンの物語。
もう一つは、男娼をしている日本人の少年の物語。
わりと序盤で、男娼の少年が客を死なせてしまい、それを隠すためマネージャのような男が奔走する場面があって、それと同じ頃に結婚式場を飛び出そうとする韓国人の新郎らを取り押さえようと暴れる人々が描かれる。
式場の前をそっと通り抜けようとする男とその暴動とがほんの一瞬接触するが、何事もなかったかのようにすり抜けるという瞬間の緊張感と、「接続しそうでしない」というバランス感の巧みさにぐっときた。
そして、その代わりに「写真」が2つの物語を接続させる役目を果たす。完璧。

ただストーリーが良く出来すぎてて、なんというかレディメイドな印象は拭えなかった。
国籍(日本人、韓国人)、性的指向(レズビアン、ゲイ)、職業(写真家、男娼、ヤクザ)など多様性を盛り込むぞという意識を強く感じすぎて、作り物感がどうしても前景化してしまう。

それから日本映画であること(というか、日本を舞台にしていること)の違和感みたいなのは終始つきまとう。
『恐怖分子』はやはりあのロケーションがあってこそだなというのを再確認した。

いいショットもいくつかあったと思うのだけど、忘れてしまった。また思い出したら書く。
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