KnightsofOdessa

カラスの飼育のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

カラスの飼育(1975年製作の映画)
5.0
No.603[アナ・トレントという怪物に撓垂れ掛かったサウラ、一本締め映画に関する私的論] 100点(オールタイムベスト)

初めて見たのが国立二次試験前日だったのだが、Jeanetteの”Porque te vas”の破壊力が凄すぎて試験期間中ずっと聴いていたという思い出がある。今でも聴くと嫌そうに学校に行くアナ・トレントの顔と共にあの時の感情が鮮明に思い出される。想い出記録。

後から考えてみて内容があやふやだったり、見ている途中では何とも思わなかったりするけどラストシーンで気に入る映画を”一本締め映画”と勝手に命名しているのだが、本作品は最たる例である。
フランコ政権の高官である父親が情事の最中に死亡し、残された三姉妹は叔母に引き取られるという話で、成長した次女と亡くなった母親をジェラルディン・チャップリンが演じることで系譜を重ね、少女時代の次女を怪物少女アナ・トレントが演じている。1973年に退陣したフランコが1975年に死亡、翌年の1月に公開されたこの映画は、フランコ後の世界をぎこちなく謳歌する次世代とどうしていいか分からない旧世代の対立を描いているような描いていないような話で、実は内容は無いようなもの。ただ、ラストで超嫌そうに学校に行く三姉妹が雑踏に消えるまでを追う際にかかるJeanetteの”Porque te vas=あなたが去るから”は非常にエモーショナルで、心を揺さぶる。一本締め映画は”終わり良ければ全て良し”の観点から評価が上がる傾向にあるのが分かっていただけただろう。

サウラは「ミツバチのささやき」以降学業に専念していたトレントを説得し、休み期間に撮り上げたらしい。トレントに心酔していたサウラの心が見え透く脚本はやはり当て書きなのだろう。彼女の存在感が凄いが、それ以上にトレント以外の存在感が最早空気レベルなのは、トレントの凄さ以上にサウラのトレント愛がチラつく。これ以降学業に戻ったトレントはアメナーバル「テシス 次に私が殺される」で復帰するのだが、可愛いぷっくりした少女時代をどこかへ置いてきたラテン系のお姉さんになっていた。

色々御託を並べたが、私は本作品が好きだ。映画に想い出が絡まると正当な評価を下せないのは知っているが、それでも好きなものは好きだから仕方がない。私のiPodでJeanetteのこの名曲はトップ10に入り続けている。