カツマ

フライト・ゲームのカツマのレビュー・感想・評価

フライト・ゲーム(2014年製作の映画)
3.9
これはミステリによく使われる、所謂クローズドサークルの設定を鮮やかにアクション映画へと転用した作品だ。クローズドサークルとは、孤島や山荘といった隔離された空間で巻き起こる物語のことで、アガサ・クリスティの『オリエント急行殺人事件』や、有栖川有栖の『月光ゲーム』など名作は数多い。この設定の面白さは、限定された容疑者の中に犯人がいること。そして科学捜査が入らない(警察がぞろぞろと介入しない)点だ。
この映画のクローズドサークルは飛行機内。完全に隔離された空間内に必ず犯人はいる。しかし、分からない。ビックリするくらい犯人が分からなかった。果たしてリーアム・ニーソン演じる孤高の保安官は146名の容疑者の中から犯人を見つけ出すことができるのか!?

航空保安官のビルはその日もいつものように業務を遂行するため飛行機に乗り込む。航空保安官とは機内の搭乗者の安全を守る空の警護者のこと。ビルは経験豊富なベテランだが、かつて娘を亡くして以来アルコールに溺れる生活を送っていた。
飛行機が離陸して間も無く、ビルの携帯電話に謎の人物からメールが届く。そのメールには、20分以内に指定の口座に1億5000万ドルを振り込まないと乗客を1人殺すという脅迫文が刻み込まれていた。ビルは犯人を特定すべく周りを見回すが、乗客は140人以上、とてもじゃないが断定は無理だ。そんな彼の前に、同じく航空保安官のジャックが何事かと近づいてきて・・。

主人公のビルは粗野で、決して感じの良い人物ではない。そのため、乗客が次第に彼への疑心暗鬼を強めていくのだが、そこはリーアムの頑固幸薄オヤジキャラが炸裂。全く違和感なく乗客を敵に回す(笑)

そんなビルと乗客との連帯の過程の描き方が非常に上手く、ジャウム・コレット・セラ監督の巧みな心身誘導術にズブズブと引き込まれていった。
2時間弱の息もつかせぬ攻防は見ごたえ抜群!ジュリアン・ムーア演じる謎めいた隣人の存在も、非常に良いスパイスになっていた。
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