恭介

わたしは生きていけるの恭介のレビュー・感想・評価

わたしは生きていける(2013年製作の映画)
3.5
ドキュメンタリー映画に定評のあるケヴィン・マクドナルド監督作品。

消されたヘッドラインやフォレスト・ウィテカーにオスカーをもたらした、ラストキング・オブ・スコットランドなど硬派な作品も生み出す彼と、妖精のような存在感のシアーシャ・ローナンの組み合わせを楽しみに鑑賞。

死んだお母さんの姉家族を訪ねてアメリカからイギリスのど田舎に来たローナン。3人の従兄弟達と暫く住む事に。

最初から田舎の全てにイラつき、従兄弟達にも当たり散らす嫌な少女ローナン。
それでも天真爛漫な3人と一緒に行動していくうちに次第に心を開いていく。

次男役に今やアベンジャーズの一員まで出世したトム・ホランド。スパイダーマンに比べまだまだ幼さが残るお調子者の次男を好演。

そしてローナンはいつしか長男と惹かれ合い、お互い愛し合うようになるのだが・・

まずこの前半、硬派なイメージのマクドナルド監督作品とは思えない、ココに住みたくなる程の大自然の映像が素晴らしく、ローナンのどこか荒んだ心が徐々に和らいでいく過程を説得力あるものにしている。

そして前振りはあるものの突然訪れるロンドンでのテロによる核爆発。
ロンドンから遠く離れているとはいえ、その核爆発の瞬間の描写も秀逸だ。

後半はその第三次世界大戦勃発による急転直下の展開を見せ、前半のトーンとは全くかけ離れた物語が続く。

軍により強制的に愛している長男と次男と離れ離れになったローナン。別れ際に、必ず住んでた家に帰ってこい!待っているから!と約束を交わす2人。

その言葉を信じ、ローナンは強制避難場所から幼い従兄弟の妹とともにに長男と愛を育んだ家に向かって脱走する。
しかし、戒厳令が敷かれた外の世界は無法地帯に近い状況。2人は過酷なサバイバル
を余儀なくされる。

前半と後半のコントラストが激しく、サバイバルの途中にもかなり辛い場面が幾つかある。また、状況説明を敢えて少なくし、あくまでもローナンの一途な愛に焦点を当てているストーリーは好みが分かれるかもしれない。

物語の締め方も、人によってはモヤモヤした物が残るかも。
・・・いや、残る(笑)

しかし、ローナンが長男に心を開くキッカケとなった行動をラストにまた持ってくる事で、この映画は純愛映画として完結する。どうか元の幸せな時間を取り戻せますように。そんな観る者の儚い願いに少しだけ明るい希望が見えるラストが救い。
恭介

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