幽斎

ライト/オフの幽斎のレビュー・感想・評価

ライト/オフ(2016年製作の映画)
3.8
元ネタはBloody Cuts Horror Challenge映画祭に出品された短編2分41秒の動画。これでDavid F. Sandbergは監督賞を受賞。夫人でもあるLotta Lostenしか登場しないが、YouTubeに投稿されると全世界で1億5000万回再生され、私の生涯ベスト「SAW」のJames Wan監督の目に留まり、ハリウッドで長編化。この短編は話題に成る前にVimeoで観たが、驚嘆に値する秀逸な動画だった。

短編は日本の幽霊と同じ様に、何者か分らない、何をするのかも分らない、実際は人間にしか見えない虚像だから寧ろ怖い訳で、ハリウッドでモンスター化され、スピリチュアルな面が削ぎ落とされ、短編が持っていた見えたのに見えない恐怖が消えてしまった。蛇足の脚本とお決まりの家族愛で終結するので、光アレルギーと皮膚疾患とか工夫は見られるが、結果ありふれたホラーに為ってしまった。

それでも流石はJames Wan、観ている間はしっかり楽しめるホラーに仕上がってるのは凄い。暗いシーンが多いので音楽が重要に成るが、Benjamin Wallfischの邪魔をしない演出は良かった。この作品が評価され「ブレードランナー 2049」も担当する事に成る。主演のTeresa Palmerが際立ってたが本作で脚光を浴び、旦那である「13の選択」のMark Webberと立場が逆転しないかと心配。私的にはMaria Belloが元気そうで良かった。

2分41秒の動画を81分に水増しする訳だから最初から無理が有るし、設定も全て後付けなので、肝心な物語の完成度がお座なりなのは仕方無い。電気をパチパチで何か来る、と言う設定は新鮮だが良く考えると、2002年「インプラントTHEY」とか、2003年「黒の怨」の様に、この手の設定は昔から良く有るホラーの定番で、日本のTVで観れる「世にも奇妙な物語」と大差無い。ホラーに耐性の有る方には相当物足りないのでは、と思う。

ホラーこそコンセプトが命。同じJames Wanでも実話を基にした「死霊館」と、ヒットしたから続けた「インシディアス」では、クオリティの差が歴然だ。本作も続編が決定したと言われて2年以上経った、まだプリプロダクションすら掛かって無いが、生暖かく見守りたい。短編がとても良かったので点数は甘めです。
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