ねこたす

ショート・タームのねこたすのレビュー・感想・評価

ショート・ターム(2013年製作の映画)
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子供たちの境遇を、決して上から目線にならず温かい目で見守る。監督のダニエル・クレットンが施設で働いていた経験を元に脚本を書いたようだ。しっかり調査をし、子供たちからヒアリングをして作った物語は、多くの人を心を動かすだろう。

主人公グレースの妊娠の場面から、するどい人は彼女の境遇に気付く。愛する二人でもやはり、言えないことはあるのだ。
彼氏のメイソンも養父母に引き取られている。

そんな彼らとは対照的な新人ネイト。大学を休学して"いい経験"の為施設にやってくる。恵まれない子供っていうフレーズがすぐ出てきちゃうあたり、正義感はあって勉強はしているだろうけど、理解できていない人なのだ。消毒液のシーンは、気持ちは分かるけど見えないところでやりなよと笑

そんな「ショート・ターム12」と呼ばれる施設で暮らす子供たち。この映画音楽がとても良いのだが、穏やかで画面も明るく撮られている為、どこか牧歌的な雰囲気も感じられる。

そんな一瞬も風のように吹き飛んでしまうほど不安定。グレースはそれでも慣れたように対応していくが、自分自身の問題がだんだんと表れ、"仕事も家庭も"のようになっていく場面はサスペンスのようだ。

それでも、鏡合わせのようなジェイデンとの交流からお互いが自分を見つめなおし、心の葛藤をぶつけるシーンはガッツポーズしたくなる。女性の力ということもあるが、壊す為何度も何度も振りかぶる彼女の姿が印象的。

そして、円環構造のように最初の場面に戻るのだが、それがいつなのか名言されていないところがミソだ。
ネイトの研修期間中なのか、はたまた研修後また戻ってきたのかもしれない。
分からないけれども、それでも変わらない毎日が続いていくのだ。その中のかけがえのない一瞬を切り取った映画。
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