けんぼー

ショート・タームのけんぼーのレビュー・感想・評価

ショート・ターム(2013年製作の映画)
4.0
2021年鑑賞114本目。
子供は親を選べない。それでも、ただそばにいてくれる人がいるだけで救われる。

ティーンエイジャーをケアする短期保護施設「ショート・ターム」で働く20代のケアマネージャー「グレイス」と、施設の子供達の物語。

「ブリー・ラーソン」演じる主人公のグレイスが働く「ショート・ターム」という施設には、さまざまな事情を持った子供達が入所し、早ければ数日、長くければ数年間、その施設で生活する。
グレイスたち職員は施設の子供達の心のケアをするだけでなく、彼らの命も守ることも重要な仕事。むしろそっちの方が大切。

例えば、施設に入所する際に、子供が所持している刃物類は全て没収する。そして子供達の部屋の扉は常に開けておかなければならないというルールもある。また、子供達を庭で遊ばせている間に子供達の部屋を隅々までチェックする。など、子供達が自分で自分を傷つけないようにするための工夫やルールも描かれる。
そしてそれらを説明的にならないように提示するデスティン・ダニエル・クレットン監督。さすが。

しかし、もちろんグレイスたちに心を開く子供ばかりではない。反発してきたり、心を閉じてしまう子供もいる。だけどグレイスたちはそんな彼らのそばにいて、話を聞いて、時に励ましてくれる。そして子供達は次第にグレイスたちに心を開いていく。
「ただそばにいてくれる人」の存在によって「閉じゆく世界」が開いていく。

そして、とある少女が入所することがきっかけとなり、グレイスの過去にフォーカスが当たっていく。
グレイスは子供達をケアする仕事をしているのだが、自身の心にも大きな闇を抱えていた。
どんな過去があるのかは実際に映画で確認してほしいが、簡単にいうと「父親」が関係している。

グレイスと子供達の境遇には同情してしまうが、彼らが自分自身の過去と向き合い、乗り越える姿を見ることで、とても感動したし、とても勇気づけられた。

子供は親を選べない。

だけど、きっとそばにいてくれる人がいて、そんな人たちのおかげで救われる人もいる。

この映画はまさに、私たちのそばにそっと寄り添ってくれる温かい作品。
映画を見終わった後だとパッケージの印象が変わるのも素晴らしい。

2021/9/10鑑賞