フラハティ

ショート・タームのフラハティのレビュー・感想・評価

ショート・ターム(2013年製作の映画)
3.8
あなたにはわからない。


"ショートターム12"は、家庭に問題がある少年少女を一時的に保護する施設。
拠り所であるはずの家庭から弾かれ、居場所を無くす子供たち。
心に抱えた闇は、奥深くに潜り込む。

子どもの成長過程で大事なこと。
それは居場所を作ること。
その居場所は家庭のはず。
親は子どもの最大の理解者であり、永遠の愛。
その居場所が無くなった場合、拠り所を作る。


傷ついた相手とどう関わるか。
その相手が心を開くか。
その相手が良い方向へ進んでいくのか。
それは相手次第。


学校の先生が熱い指導で、問題ある生徒と分かり合う。
こういうのは苦手だ。
こんなこと言うのもなんだけど、こういう家庭の問題や人間関係の悩みを、一方的な熱い指導で分かり合うのってたぶん無理。
本作のケアマネージャーは一方的じゃない。
熱い指導もないし、他人行儀でもない。
悩んでいるときに寄り添い、時には距離を置く。
そして同じ過去を持つのはすごい重要なんだよな。

他人と純粋な利害関係のない関わりは意外と貴重。
"ショートターム12"でも、金銭関係とかないから子どもとケアマネージャーは対等。
セラピストは結局利害関係だし。
学校の先生は上下関係のほうが多い。
だからこそ親のような存在は唯一無二だし、ケアマネージャーのような存在も貴重。

子どもであれば、自分が何か悪いことをしたからこうなったと、自分を追い込むことは多い。
実際は子どもには何の問題もなく、周りの環境に問題があることがほとんど。
そんな子供たちを好意的に受け止めてくれる場所は、どれだけあるだろうか。
本作のような環境は、数えきれないほど現実に存在する。


辛い過去があったとしても、過去を乗り越えられるほど楽しい現在があれば変わっていく。いや、変わっていかなければならない。
本作では最初と最後の展開が同じだが、全く感じることが違う。
心に傷を負うことは辛いことだが、その傷を誰かに伝えるのはより辛い。
ちょっとした言葉に傷つくし、ちょっとした行動で悩む。
だからこそ、話を聞くだけでも重要だし、ささいな心境の変化を汲み取るのは言葉よりも大切だ。
ただ寄り添うだけでいい。
傷ついた相手の拠り所になれるならば。


自分は自分の意思でしか変われない。
変わることを後押ししてくれるのは、周りの環境。
自分を受け止めてくれる人は、この世のどこかに絶対いる。
だから明日も生きていく。
そんな希望を感じさせる。
フラハティ

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