よしまる

ショート・タームのよしまるのレビュー・感想・評価

ショート・ターム(2013年製作の映画)
4.2
 なんらかの精神的問題を抱える10代の子供を預かる短期の保護施設、ショートターム12。
 そこに入所してくる子供たちとケアマネージャーとの間に次々と起こる事件を通し心の交流を描いたハートウォーミングな物語。

 と書くと、優しさに溢れ、すごくあったか〜いドラマを思い浮かべてしまうかもしれないけれど、実際にはなかなかハードなストーリーが直球でビュンビュン飛んでくるし、そこに下世話な(よく言えばアホみたいにリアルな)ラブロマンスも投下される。

 ちょっとレトロで懐かしい空気を感じさせるフィルムの質感やアコースティックなサウンドも含めて、とても現代的な映画だなと感じた。

 家族との確執、自閉症や自傷、妊娠中絶といった過去に幾度となく重いトーンで描かれてきた題材も、おそらく若きデスティン・ダニエル・クレットン監督や、この映画を何かのきっかけで観てみようと思ったティーンエイジャーにとっては、もはや突拍子もない絵空事でもなければ、自分や自分の周りに無関係な事象では全然ないということではなかろうか。

 身に降りかかる困難を悲劇として捉えるのでもなく、ただ自然に受け入れ、共有していく。

 すでにずいぶん前にオトナになったボクは、憤るブリーラーソンよりも、なだめる所長のほうについ共感してしまって驚いた。もし若い時に同じような境遇に置かれたら、所長に激昂して速攻辞表を提出していたことだろうw

 そんなオトナの事情さえ押さえつつも、この作品の視点にはどこを探してみても異質な他者を排除する感覚は、ない。

 異常なオトナ達が蔓延る世界へとシフトしている現実がある一方で、こんなにも暖かい物語が紡がれていることが嬉しくて泣けてくる。
 ほんの一瞬を切り取ったおとぎ話であることには間違いないのだけれど、それを語り継いでいくことに意味がある。やさしい世界が続きますようにと。