もっちゃん

薄氷の殺人のもっちゃんのレビュー・感想・評価

薄氷の殺人(2014年製作の映画)
3.7
中国版フィルム・ノワール。ファム・ファタルを演じるのは台湾の女優グイ・ルンメイ。
まさに彼女の演技があってこその作品であると思う。儚い表情、憂いのこもったまなざし、何か深い過去を秘めているような面持が男たちを惹きつけ、そして破滅へと導く。

酒におぼれ、妻とも別れ、干された刑事ジャンがバラバラ殺人事件の真相を追っていく中で一人の女性に出会う。真相に近づくにつれ、明かされる彼女の素性。深い闇に落ちていく古典的ノワール。

中国のとある街。雪が降り積もり、中国特有のギラギラしたネオンが夜の街を包む。息苦しさを表現するのはたばこの煙だけではなく、しゃべるごとに吐き出される白い息。ネオンが照り付け、登場人物たちは様々な表情を見せるとともに白い息に新たな色を付していく。

さらに、今作はノワール作品のオマージュが隠されていると思う。警察に追い詰められ、逃げる夫を遠くで一定の距離から撮影するショット。これはポランスキーの『チャイナタウン』を彷彿とさせる。さらによろよろと崩れ落ちる夫、これはゴダールの『勝手にしやがれ』を想起させる。
オマージュを受けたかどうかは分からないが、いずれにせよ一つのノワールの系譜に刻まれる作品が生まれたということだけは言える。