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ゼロの未来のJIZEのレビュー・感想・評価

ゼロの未来(2013年製作の映画)
4.0
ヴァーチャル化された近未来の管理社会を舞台に謎の数式"ゼロの定理"を解析し証明するため朽ち果てた教会に籠る孤独な男の未知な運命に迫るSF天才物!!崇高な映画だ..不器用な孤独者物は毎度脆に惹き付けられるものがある。まずお話自体は"巨大な虚無に取り憑かれた男が出口に奔走する映画"なんだけど,実際それ以上に感情が突き動かされ無限な価値を帯びる感動映画だと言えた..まず監督テリー・ギリアム作品は意外にも初。本作を観る前にまあ『未来世紀ブラジル(1985年)』程度は観て挑む方が段階的に無難だと先述。まず本作。話の骨格を返せば"世間の雑音から逃げ続けてきた(混沌な虚無に取り憑かれる)孤独者が(潤な)信念を糧に真理(ゼロの定理)を追い続ける話"だと読み取る。要は弱者の鮮烈な旗揚げ物or固定的な概念への注意喚起物,だと。何より主役コーエンが対話を通じ救われる(奇を衒った)部分も現代人特有の内に籠り社交性が欠如した閉鎖感に置き換えられ全体的にあちこちで根源的な風刺が発動する社会派な映画に思えましたね。映画(物語)の進行と同時に事態(世界観)に1番適合していない人物が実は主人公という不穏さ漂う設定も自体が進むに連れ微妙にパラドキシカルな反転性を帯び特に終盤で示す立ち位置の示唆も一元的な見方を否定した分に実に感慨深い演出だと感じた。

また近代の現代社会に通づる共通項でも風刺が安易に張られ醍醐味を成した。要は例で挙げ主に「存在意義は?」や「楽しみとは?」,「人間性って何?」程度のシンプルで実存的な誰にでも通底し考えさせられる問題提起の曖昧性。答えの導き方が無限に存在する不変的で不確かな投げ掛けは答え自体が明白でない分,誤読の余地を与え親切な構造だと感じた。要は無意味な繰り返しにこそ究極的な本質の要が内存され逆に価値ある表面的なものこそ本質が致命的にも欠如し本末転倒な逆説を帯びる構造だと。全編的に突き詰めすぎず数奇なSF世界を利用し曖昧にバランスを保つ演出は映画的に体裁が格好良く惹かれますよ。中々近年稀に見る貴重な映画体験で同時に劇場で鑑賞できなかった事に後悔が絶えない。

概要。寂れた教会で1人「ゼロの定理」と呼ばれる謎の数式に取り組む孤独な男がとある女性との出会いをきっかけに彼の運命は大きく動き出していく..監督は『未来世紀ブラジル(1985年)』や『12モンキーズ(1996年)』の鬼才テリー・ギリアム監督。主演には『イングロリアス・バスターズ(2009年)』や『ジャンゴ 繋がれざる者(2012年)』のクリストフ・ヴァルツ。また本作は第70回ヴェネツィア国際映画祭でプレミア上映され喝采を浴びました。

では結論部を先に理論立て証明すれば,観終えて結局"無(無意味or空虚)"なカオス思想(混沌)を有意義に崇拝する啓蒙映画であったのだと解釈した..つまり無意味で空虚な事(言動)こそ実は幸福度が極まりなく高く有意義。つまり無意味な思想こそが"無限の価値が内存"する万物なんだと。使者がコーエンを訪ねる数々の場面でも人間性を甦らす一見コーエン視点で見れば無意味,ただ,視点を衒えば有意義。また有名で崇高な台詞「ゼロは100%であるべきだ..」に対し(私解釈上で)返歌を申せば,「いや,ゼロはゼロのままがいいんだ,イノセントな状態であるべき,有意義が絶対に善(商業的)だとは万人に確答せず限らないだろ..と映画を観終え改め。

世界観の設定(美点)。
絶賛!!神なき世界だと。政治的な部分の関与がない事をまず絶賛。抑圧や武力が蔓延るディストピア像というよりマンコムと呼ばれる巨大企業が統率する世界観。メディア広告の大型な電子パネルが街中に張り巡らされ管理社会の役目を成す禁止事項だらけの陽気で鮮やかな世界観。近未来像も現実離れせず現代的な統一性がある象徴性を残し消費社会の要素も含めどこか街の喧騒が駆け巡るなか虚無的で孤独感が漂う殺風景な闇感など。ただ苦言を呈せば夜の景色を魅せる事でコーエンそのものの闇感を更に肥大させる1場面欲しかった。映画の社会像に対し何か恨み辛みがコーエンにあれば物語的に幅を持たせる展開に転ばせたのでは......

「コーエンですカインではありません..」謎に連呼された呼称ギャク...序盤は特に。。

総評。
終盤,溶鉱炉の場面でコーエンが"ある人物"との対話を通じ脆にキレ出す場面でも現在迄,信念を糧に邁進してきた者だけに感情移入ができ1番グッときた..ダーク路線でSF全開。あっち側の世界にね...あとペインズリーというヒロインとヴァーチャル世界の南国で触れ合う数々の場面も唯一コーエンの孤独感(愛枯)を埋め補完し合える関係性を親密に築いていく秘話感もクスッと笑えコーエン自身の内情推移を示す絶大な役目を果たした。とにかく元が確実に取れ映画自体の可能性を更に奥へ奥へ感じ取れる映画なので観て損なしは確実。巨大企業に管理された世界観のみ堪能する見方でも十分最高。序盤でコーエンが受話器の手間で興奮気味に構えいかにピュアな精神を育んできたかが後々の亀裂に接続され純な思想対邪な思想の対峙にも終盤取れた。何よりコンプレックスを抱え込んだ者が思わぬ事態に巻き込まれやがて根底から事態の根源性を覆す映画単一の見方をしても十分楽しめ内容量が偏り過ぎざ充実している。人生意義の根源を衒う最高の映像体験と映画そのものの問い掛け。結果テリーギリアム入門作には適した作品だった。是非お勧めです!!