えいがうるふ

ブラインド・マッサージのえいがうるふのレビュー・感想・評価

ブラインド・マッサージ(2014年製作の映画)
4.0
視力障害というただ生きるだけでも大変そうな大きな障害を持つ人々は、目に見えるものに惑わされない分、なんとなく自分たちよりも清廉な世界に生きているように想像してしまうのは、やはり健常者の奢りなのだろうか。むしろ視覚に頼れないからこそ、より研ぎ澄まされた残りの感覚が見えないものを見ようとする心の動きをストレートに行動に反映させるのかもしれない。特に主人公の恋愛は危ういほど直情的で、見えないはずの見てはいけないシーンを周囲の盲人が息を殺して耳で凝視している様子など、思わず観ているこっちまで息を止めてしまいそうな臨場感が凄まじかった。試しにヘッドホンをして目を閉じて音だけでそのシーンを再生してみたら、変な汗が出そうになった。

彼らの視界の狭さを象徴するように、絶えず寄りのアングルが息苦しい。かと思えば昼夜の区別を表現するのではなくあくまでも本人たちの心象風景としての明暗を表す光の使い方に度々ハッとさせられる。
舞台設定の地味さからは想像できないほど鮮烈な作品だった。