愛鳥家ハチ

ブラインド・マッサージの愛鳥家ハチのレビュー・感想・評価

ブラインド・マッサージ(2014年製作の映画)
4.0
ロウ・イエ監督作品。全盲の方々によって運営されているマッサージ院を舞台とした人間ドラマ。複数の登場人物のエピソードが連なる構成という点では、イエ監督自身の『スプリング・フィーバー』と重なります。また、障がい者の性に切り込んだという意味では、HIKARI監督の『37セカンズ』に通ずるものがありました。ただ、ごく一部痛々しい刺激表現があり、苦手な方は目を細めることになるかもしれません。

ーー不可視
 本作には全般的にハッとさせられる台詞が散りばめられており、多くの気づきを得ることが出来ました。その中から一つだけ挙げるとすれば、"目が見えないからこそ、目に見えないことについての本質をよく知る"という趣旨の語りです。視覚に囚われないからこそ、物事の核心を捉える感性が研ぎ澄まされるということなのでしょうか。金子みすゞは詩の中で、「見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ」と昼間の青空の向こうに輝く星々を詠いましたが、視覚では捉えきれないけれども確かにあるものを、視覚障がいのある方々はより鋭敏に感じ取っているのかもしれません。同時に、「人は見た目が○割」というキャッチフレーズを引き合いに出すまでもなく、とかく目に映る情報に頼りがちになってしまう視覚健常者の姿勢を諫めてくれているようにも感じられました。

ーー総評
 本作は、今一度視覚以外の感覚、感性を大事にし、磨きをかけたいと思わせてくれる有難い作品でありました。
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