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6才のボクが、大人になるまで。のkuuのレビュー・感想・評価

4.0
『6才のボクが、大人になるまで。』原題Boyhood.
映倫区分PG12.
製作年2014年。上映時間165分。

リチャード・リンクレイター監督(この監督のスクール・オブ・ロック個人的に好きです)が、ひとりの少年の6歳から18歳までの成長と家族の軌跡を、実際に12年をかけて撮影した米国産ドラマ。
主人公の少年メイソンを演じるエラー・コルトレーンを筆頭に、母親役のパトリシア・アークエット、父親役のイーサン・ホーク、姉役のローレライ・リンクレーターの4人の俳優が、12年間同じ役を演じ続けて完成されたって気のなが~い。
少年を演じるエラ・コルトレーンは、映画の撮影が始まったときは7歳で、映画が終わったときは19歳だったそうっす。
イーサンホークとパトリシアアークエットの両方が実際に離婚、再婚を経験し、別の子供をもうけたそうてすが、12年間って実際人はかなり人間模様も様変わりするやろなぁ。

米テキサス州に住む6歳の少年メイソンは、キャリアアップのために大学に入学した母ちゃんに伴われてヒューストンに転居し、その地で多感な思春期を過ごす。
アラスカから戻って来た父ちゃんとの再会や、
母ちゃんの再婚、
義父の暴力、
初恋などを経験。
そして、大人になっていくメイソンは、やがてアート写真家という将来の夢を見つけ、母親のもとを巣立つ。12年という歳月の中で、母は大学教員になり、ミュージシャンを目指していた父も就職し、再婚して新たな子が生まれるなど、家族にも変化が生まれていた。。。

写実映画と実験映画(アバンギャルド映画。既存の映画の手法や形式を超えて生み出される実験的・革新的な映画の総称)てのは、ちょくちょく相反するモンとして扱われる。
そうでなければならへん理由はないのに。
今作品は、総体的には伝統的な写実映画って云っても過言じゃない。
つまり、シンプルに撮影されてるし、プロット上のギミックも排除して、実際に生きとるような人生に近づけることを目指してるって感じた。 
一方で、この目標を達成するために、リンクレイター監督は、実験的手法を用いている驚く。
今作品はまるで、◯◯さんちの大家族って長年一家族を追いかける番組の米国版(家族構成は少なめやけど)かな。
主人公のメイソン・エヴァンスを演じる俳優エラール・コルトレーンは、6歳から18歳(実際は19才になっとったけど)の青年になるまで、画面上で変貌を遂げる。
離婚した母ちゃんオリビア役のパトリシア・アークェット、
姉ちゃんのサマンサ役のローレライ・リンクレイター(監督の娘)、
時々立ち寄るミュージシャン志望の父ちゃんメイソン・スネール役のイーサン・ホーク等。 
他の俳優も当然ながら年をとっていく。
こないな珍しい手法てのは、ある意味、逆説的なドキュメンタリー性を与えてるし、観てる側にはメイソンに近づけてくれる。
メイソンの人生に無くてはならへんキャラが予告なしに現れては、また消えていく。
また、観てる側が目撃する出来事は、必ずしもメイソンの幼少期や思春期のターニングポイントじゃないことに気づかされる。
最初の性の体験とか、重要な節目と思われる出来事は完全に省かれてた。
実際、今作品にはそないなプロットはない。
予測が不可能と流動性の感覚がポイントのひとつかな。
また、知恵とクソが混ざり合った暴言がしばしば出るが、今作品には必要不可欠なんかもしれへん。
メイソン氏がビートルズの魅力を語ったり、
退役軍人(ブラッド・ホーキンス)がイラクでの経験を誇らしげに語ったりする。
今作品には時代を超越した要素がある。
これってのは、9.11の同時多発テロからバラク・オバマの当選までの最近の歴史や、新しい世代が以前の世代とどのように違うのかという疑問に関わる映画でもあるけど今でも古さは感じないけど、実際、バラク・オバマって少し前の現実やし映画は不思議。
監督は、保守的なキャラを公平に扱おうとする一方で、テキサスの下層中流階級に蔓延するマッチョな価値観にはほとんど共感していないことは明らかかな。
いじめのシーンや、少年たちがお互いに恥をかきながら性差別やそれ以上のことをしてしまう様子を描くのは得意。
しかし、メイソンにはこのような状況を乗り越えるだけの優しい性格が与えられている。
彼が不機嫌な時も、仲間のくだらないジョークにニヤニヤしている時も、彼が悪い方向に進んでしまう危険性は感じられへんし、それが今作品の緊張感を削いでいるのも否めない。
彼の身に何が起こっても、この先に大人としての人生が待っとるっちゅう事実だけで、彼は守られているのだと、この映画は示唆している。
しかし、彼が男として成長していく過程に、両親が中年になっていく様子が影を落としていることには、不吉な予感が隠せへん。
喜びと悲しみの両方を伴うプロセスであり、若い人だけが持つ純粋な可能性を諦めることを意味する。
でも、ラストシーンで古い家族から離れ、大学の寮に入ったメイソンは知り合ったばかりの友と出かけたハイキング先で、新しい家族の誕生を匂わせ方で終わる。
思い切り引いたアングル。
大自然の中に配置した若者。
過去から未来への人の営みてのを自然の一部に繋ぎ合わせて切なくさせる後味。
こないな作品は終え方が難しいとはおもうが、個人的には今作品は巧みに終えたと思う善き作品でした。

今作品に使用されているサウンドトラックリストってネットにあったし抜粋しますが、実際全ての曲を把握出来なかったけど(だからこの全てが合ってるか確かめてませんがすいません🙇‍♂️)錚々たる曲たちかな。

サウンドトラックリスト
・「Yellow」コールドプレイ
・「Hate To Say I Told You So」ザ・ハイヴス
・「Oops I Did It Again」ローレライ・リンクレイター
・「Anthem Part Two」ブリンク 182
・「Soak Up The Sun」シェリル・クロウ
・「Try Again」アリーア
・「Whomping Willow and The Snowball Fight (from "Harry Potter and The Prisoner of Azkaban")」ジョン・ウィリアムズ
・「Could We」キャット・パワー
・「My Good Gal」オールド・クロウ・メディスン・ショウ
・「Rock And Roll (Part 2)」ゲイリー・グリッター
・「Split The Difference」 イーサン・ホーク
・「Do You Realize」ザ・フレーミング・リップス
・「Freaks! Freaks!」ピジョン・ジョン
・「I Held Onto My Pride And Let Her Go」デール・ワトソン
・「Crank That (Travis Barker Remix) 」ソウル ジャ・ボーイ
・「Crazy」ナールズ・バークレイ
・「We’re All In This Together」 キャシディ・ジョンソン
・「One (Blake’s Got A New Face)」 ヴァンパイア・ウィークエンド
・「Hate It Here」ウィルコ
・「LA Freeway」イーサン・ホーク
・「1901」フェニックス
・「LoveGame」レディ・ガガ
・「Desencabulada」ルイーザ・マイタ
・「Good Girls Go Bad」コブラ・スターシップ feat. レイトン・ミースター
・「Lero Lero」ルイーザ・マイタ
・「“Let It Die」フー・ファイターズ
・「Sous le Soleil」メジャー・ボーイズ feat. オーレリア
・「Wish You Were Here」サバンナ・ウェルチ
・「Radioactive」キングス・オブ・レオン
・「Sunshine Day」オシビサ
・「Beyond The Horizon」ボブ・ディラン
・「Telephone」レディ・ガガ
・「Band On The Run」ポール・マッカートニー&ウイングス
・「Happy Birthday To You”」「Ryan's Song」イーサン・ホーク
・「Notre Dame Victory March」 「She’s Long Gone」ザ・ブラック・キーズ
・「Pout」デビッド・クラーク&サム・ディロン
・「Helena Beat」フォスター・ザ・ピープル
・「Suburban War」アーケイド・ファイア
・「Somebody That I Used To Know」ゴーティエ feat. キンブラ
・「Gobbelins」ブルース・サーモン, ウェイン・サットン
・「Old Black Crow」オースティン・スティーマーズ
・「I’ll Be Around」ヨ・ラ・テンゴ
・「Trojans」アトラス・ジーニアス
・「Nao Acorde o Nenem」モレーノ・ヴェローゾ
・「Em Todo Lugar Voz Boa」モレーノ・ヴェローゾ
・「Que Mala」フレディ・フェンダー
・「Coisa Boa」モレーノ・ヴェローゾ
・「The Dog Song」チャーリー・セクストン
・「Hero」ファミリー・オブ・ザ・イヤー
・「Summer Noon」ジェフ・トゥイーディ
・「Deep Blue」アーケイド・ファイア
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