MasaichiYaguchi

6才のボクが、大人になるまで。のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.6
この映画の監督&脚本を担当したリチャード・リンクレイターはロングスパンの作品が好きなようだ。
「恋人までの距離(ディスタンス)」、「ビフォア・サンセット」、「ビフォア・ミッドナイト」の三部作は、イーサン・ホーク&ジューリー・デルピー主演で9年スパンで製作、公開されたが、本作品では、主要キャスト4人がそのまま12年に亘って撮影を行っている。
普通、映画やテレビドラマでは、主人公の幼少期や少年期は子役を使ったりするものだが、干支が一回りする間に、監督は勿論のこと主要キャストに不測の事態が起こったら、作品はそこで潰えてしまう。
イーサン・ホークとパトリシア・アークエット演じる実の両親と二人の子供たちとの歩みは、時代背景も含め私の家族のそれとオーバーラップするところが多く、観ていて当時が懐かしく思い出された。
エヴァンス家の波瀾万丈の家族ドラマは、2組に1組が離婚しているアメリカでは決して特異なことではないし、3組に1組が離婚している日本においても、彼らと同じような境遇の人々だっていると思う。
家庭環境の変化によって浮き彫りにされていくのは親子の関係。
個人主義が確立されたアメリカでなくても、子供は成長するにつれて自分の世界観や夢も変わっていくし、そして親も子育てと仕事やプライベートとの両立に悪戦苦闘しながら、子の成長に合わせ接し方を変えていく。
自分の懐にいたと思っていた子供たちも、いつかは独り立ちして巣立っていく。
この映画は、親の立場から観れば、子供が成長していくことの喜びや子育ての葛藤が喚起され、子供の立場から観れば、親や家族の存在をもう一度見詰めたくなる作品だと思う。