えいがドゥロヴァウ

インポート、エクスポートのえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

インポート、エクスポート(2007年製作の映画)
3.7
兼ねてより気になっていたウルリヒ・ザイドル監督
『インポート、エクスポート』という暗喩的なタイトルが様々な想像を掻き立てますが
「入れて、出して。」というメインコピーとR指定を鵜呑みにしてしまうと
少し実際の内容と異なります
オーストリアとウクライナの国を行き交い
それぞれの人生が干渉し合わない女(オルガ)と男(ポール)の
"抜き差しならぬ"現実について

本作の物語は移民と貧困の問題に深く根差していますが
殊に移民問題となればファティ・アキンの『そして、私たちは愛に帰る』が思い浮かびます
そちらはドイツとトルコでしたが
本作と同じ2007年に制作されたのは決して偶然ではないはずです
移民はグローバリゼーションにおける象徴的な存在で
ブレグジットやトランプ政権など昨今のトレンドと化している反グローバリゼーションの風潮において
移民の入国制限は重要な条項となっています

満たされないものに満ちながら生きるオルガやポールの姿
カメラは彼らと常に距離を保ち
傍観しているさまが時に笑いを誘う
彼らが人生に悲観しきっているかと言えば決してそうではありません
社会的弱者への眼差しという点でアキ・カウリスマキとの共通項を見出すことはできますが
カウリスマキ作品の主人公のように気位が高いかと言えば
それとはまた趣きが異なります
どちらかと言えば
辛辣な現実を受け入れる彼らの姿に人間の強かさや尊厳を垣間見るという点において
意外にもタル・ベーラの『ニーチェの馬』が近いように思えました

インポート、エクスポート
入国と出国
生と死
赤ん坊は泣きながら生まれてくる
老人は笑いながら死ぬのか?
いや、「クサい」「死」などとつぶやきながら死んでいくのさ
そんなもんよ人生なんて
たまに踊って気晴らししていりゃ
どうにかなるもんよ
そんなもんよ