Echoes

伝説のレーサーたち 命をかけた戦いのEchoesのレビュー・感想・評価

4.0
タイヤバリアは勿論エスケープゾーンすらろくに確保されていないサーキット
蹴っただけで外れる一箇所ボルト留めしただけのガードレール
ニュル北で開催されるドイツGP、炎上するラウダのフェラーリ
レース中事故が起こった場合の救出体制が整備されておらず、ドライバーが乗ったマシンが炎上しているにも関わらず、始まらない消火活動

現代F1とは異質の危険さと事故への稚拙な対応を映像として見ると改めて衝撃を受けた。

レーシングドライバーが乗るのは車だが、大半は劇中でも紹介されていた通り戦時中の戦闘機乗りや、例えば映画ライトスタッフのチャック・イェーガーといったパイロットたちと同じ人種であろう。

勝ちたいという欲求がある以上いつの時代も危険なことを承知で車に乗らざるを得ないし、安全のためにスピードを落として走行するということも難しい。
そしてクラッシュ自体はいつの時代も起こり得る。ろくに対策が進まない中でそれを死亡事故につなげないような安全性を確保しようという思想が生まれ、実現されるに至るまでいかに大きな犠牲が払われてきたかがよくわかる。
歴代チャンピオンたちの神がかり的なドライビングテクニックではなく、事故と安全対策という少し珍しい観点からF1の歴史を追った良作ドキュメンタリーであった。
ただG.ヴィルヌーヴとピローニの因縁とその先の悲劇的な結末にはもう少し尺を使っても良かったのではないか。

この映画が制作された翌年、セナ以来の死亡事故が発生した。今でもレーシングドライバーは常に死と隣り合わせである。
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