【感想】
劇場版3作目が話題になっている『パディントン』シリーズ。その人気ぶりに触発されて、1作目を予習しようと。
本作のストーリーは、王道でシンプル。それが功を奏して、主人公パディントンの可愛さと魅力がストレートに伝わってくる。
ペルーの森で育った小さなくまが、ロンドンにやってくる。この設定だけでも十分惹かれますが、人間社会での戸惑いや孤独といった「生きづらさ」を深堀りするのではなく、あくまで“可愛くて、ちょっとドジだけど心優しい”パディントンを中心に物語が展開されていく。
印象的だったのは、帽子の中に大切にしまっているマーマレードサンド。これはおばさんからの緊急食で、どんな時もパディントンに寄り添っているような存在。こんな子がいたら、さすがに無口な兵隊さんでも何か食べ物を恵んであげたくなってしまう。
そのまん丸い目と、つぶらな瞳で見つめられたらたまらない。しかし、家の中を水浸しにするほどの騒動を起こされると、さすがに可愛いだけでは許せないかも……
駅で一人立ち尽くしている彼を見捨てなかったお母さんの優しさにも心打たれた。自分だったら「あ、なんか可愛いのがいるな」と思うだけで素通りしてしまいそう。そんな自分との対比も含めて、作品が届ける“思いやり”のメッセージがじんわり伝わってくる。
一方で、ストーリー展開にはやや物足りなさも感じた。上映時間は約1時間半とコンパクトな分、パディントンと家族との関係性が深まるシーンがやや少なく、終盤で彼がさらわれてしまう展開には、感情移入が追いつかない部分も。もっと日常の積み重ねが描かれていれば、感動の深みも増したのではと思う。
とはいえ、テンポよく進む展開と、所々挟んでくるユーモアなシーンのおかげで、最後まで飽きずに楽しめた。
2025年 70作目