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パディントンのtjZeroのレビュー・感想・評価

パディントン(2014年製作の映画)
3.7
ペルーの山奥で、叔父と叔母に育てられていた子グマが主人公。
大地震で家族と住み家を失くした彼は、亡き叔父の旧友である探検家を訪ねてロンドンへ。
郊外のブラウン一家に拾われた子グマは、”パディントン”と名づけられる…。

「ロンドンの人々はよそ者に優しいはず」と聞かされて、期待に胸を膨らませていたパディントンだけど、当初は冷たい仕打ちに遭う。
故郷の叔母に送った手紙には「クマの居場所が無い、冷たい街です」と書く。

ここでの”クマ”は、難民や移民に置き換え可能。
本作はつまり、「いかに、よそ者(=クマ、難民、移民)に優しく出来るか」という物語。

自分みたいな理屈っぽい大人ほど、「パディントンは可愛いからいいけど、移民や難民は~だから無理」とか考えがち。
~には、”文化が違う”とか”言葉がわからない”とか、失礼な”臭い”とかいう理由が入ったりしがち。

偏見にとらわれていない子どもの方が、パティントンを迎えるように、移民や難民にもあたたかく接することが出来るのかもしれない。
本作でも、最もパディントンに心を開かないのが、一家のお父さんであるミスター・ブラウン。

そんなブラウン氏でさえ、クライマックスでは「生まれが地球の反対側だろうが、種族が違おうが、パディントンが好きだ!」と感動的なセリフを吐く。
ブラウン家に家族として受け入れられたパディントンは、ロンドンについて「変わり者だらけの街だから、誰でも溶けこめる」と考えを改める。

本作が製作されたのは2014年。EU離脱で揺れる現在の英国にとってはリアルな肌ざわりのファンタジーだろうし、理想のイギリスに戻ってほしい…という製作者たちの願望も感じられる。
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