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狂乱の大地のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

狂乱の大地(1967年製作の映画)
4.5
No.475[政治を巡る狂気と混乱の寓話、グラウベル・ローシャ特集③] 90点

南米の架空の共和国エルドラドの政治闘争を巡る狂気と混乱の寓話であり、ローシャ渾身の"論争的扇動的映画"。主人公はジャーナリスト且つ詩人という軍事政権に真っ先に目を付けられそうな経歴の男パウロであり、彼が政治闘争に猪突猛進する姿からブラジルの延いては世界に起こりうるの問題を鋭く提示する。

パウロは保守的政治家の庇護下にあって首都で享楽的な生活をしていたが地方の活動家サラに出会って彼女の活動を支援するうちに地方で人気の議員ヴィエイラに与するようになる。しかし進歩的だったヴィエイラも知事に当選するとしがらみに捕らわれて動けなくなり、パウロは失望する。パウロが首都に戻って享楽的な生活を楽しむが、国の現状を確認してヴィエイラと再び組むことにする。政治とは結局は中間層のお祭り騒ぎであり、言葉に固執して批判者に反政府的とレッテル貼って殺してしまうことで本当に"政治"が目を向けるべき部分から目を背ける。政治とは狂乱のゲームなのである。

話自体は政治についての説教臭い話で退屈なのだが、画面にはそれを魅せ切る力があり、テンションの緩急の付け方が非常に上手い。途中の劇中劇のとこなんかローシャ以外がやったら説教臭さの方が上に出て見るのも耐えられない代物になったんじゃないか。冒頭に戻ってくるラストも反則的に面白い。

東欧諸国然り南米諸国然り抑圧されてる方が面白い映画が出てくる気がするんだけど、やっぱり抑圧はされないに限るね。題名に相応しい"狂乱"の映画だった。
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