フライ

複製された男のフライのレビュー・感想・評価

複製された男(2013年製作の映画)
3.8
こんな作品、1回見て理解出来る筈もなく2回目は集中してしっかりと鑑賞。それでも一番不可解な点に、答えを出さない不思議なミステリーなだけに、人によってある程度、考察の変わる作品なのかなと。ただ色々なシーンを注意深く観て行くと、大きな声では言えない内容だと思えるだけに、個人的には納得も。

母親からの留守電を呆然と聞くアダム。
妊娠したヘレンが全裸でベットに座る。
カオスについての説明。
アンソニーは鍵を出し扉を開け、会員制の集いの場で、裸になって自慰行為をする女性を凝視する 年配の男達のいる部屋に入る。そして女性が持ってきた蓋の閉まった銀の皿を開けると、中からタランチュラが現れヒールで潰されそうになるのをアンソニーは恍惚の眼差しで見つめる。
ジェイク・ギレンホールが演じる平凡な男性で歴史を教える大学講師のアダムは、独裁者が民衆を支配した幾つかの方法や恐ろしい手法について講義するが、生徒は全く興味を示さない。疲れたアダムが家で休んでいると恋人のメアリーが現れ食事の後、ベットで激しく交わる。そして事が終わると何も無かった様に帰って行く。SEXと言う刺激と同じ事を繰り返えすだけの単調な毎日を過ごすアダム。
ある日同僚から映画を見るかと尋ねられるが、アダムは素っ気なく見ないと答える。映画に興味の無いアダムだったが、素晴らしい作品だと教えられた'道は開かれる'と言う映画をレンタル。その映画には自分にソックリな俳優がいて、その人物が頭から離れなくなってしまう。ネットで名前や芸能事務所を確認。最終的には芸名がダニエルと言う事や住所、電話番号、そして既婚者で本名はアンソニーだと知る。我慢できなくなったアダムは、アンソニーに接触を試みる事に。

正にカオス的なストーリーに観ていて判然としなかったが、明らかにストーリー全てが、メッセージやヒントになっているのは分かるだけに、自分なりの結論を無理矢理出しスッキリさせた。
因みに色々な考察があっても問題無い作品だと思うので、もし分からなければ自分の納得が行く考察を探すのも面白いかも。

⚠️以下ネタバレや自分の考察になるので、本作鑑賞する予定の方は、見ない方が良いかと。⚠️


生活や性格は全く違うのに、顔や声、女性の好みや体の傷跡など全て一緒のアダムとアンソニー。よくある二重人格設定なのか?それとも双子?兄弟?ドッペルゲンガー?など色々と考察も出来るが、最後まで観た個人的な結論は、同一人物で有りながらも個々は存在すると言う事。正にカオス!それは歴史授業や、冒頭の留守電、アダムと母親との会話で何となく分かるし、アンソニーの母親は話題に出るが、現れない所がヒントにも思えた。端的に言うと母親が新しく作り出したのはアダムで、講義内容にもあったアンソニーが悲劇とアダムが喜劇を経験すると言う感じにも。アンソニーには過去が見れるが、アダムには見えないなど色々と見えてくるが、最終的に存在させるのは母親の気に入った良いとこ取りなのが嫌らしさもありシュールにも。ただ二重人格と言う線も写真の下りや、ヘレンと会ったアダムの「予想外の一日になった」と言うセリフと、ヘレンの電話にアダムが見えなくなってからアンソニーが出たり、終盤のアンソニーの独り言など充分有るだけに、とても興味深かったし、同時に製作者が混乱させカオス演出のブラフにも思えた。
そして怖かったのは、アンソニーの妻であるヘレンだが、ラスト明らかにアダムだと分かっていながら夫として向かい入れる行動と、指輪と言う束縛から逃れ浮気をし、メアリーに見破られ受入れられなかったアンソニーは恣意的に殺されたとでも言う様な事故車のヒビ割れた窓ガラスと蜘蛛の巣の想起に、気持ち悪さと怖さを覚えた。そしてそれはまるでアダムの母親と同じ、ヘレンが母親と言う蜘蛛になる為の必要な行為や儀式にも。
一番のヒントとして蜘蛛と言う節足動物を使った所に大きな意味合いを感じた。蜘蛛のメスはオスを食べる物もいる事から色々な想像が成り立つし、糸で操ると言う意味も感じた。途中出現する大きな蜘蛛は、母親を意味するらしく、母親とアダムのシーンの後、街を闊歩している蜘蛛のシーンは街を見張り支配している様にも。特に冒頭とラストに、美しさとは表裏一体とも思える気持ち悪いタランチュラを見つめる2人の眼差しは、敬愛を思わせるが、アンソニーが行った会員制クラブは、他の女性に行かない為の浮気男を留まらせる為の施設にも思えた。つまり浮気男の元にしか鍵は届かないのかとも。

最終的に本作から感じたのは、男の悲しい性を美しさやSEXと言う快楽を餌にし子供を作り、男性を縛り付け、世の中を創造し男を操りながら動かしている影の支配者は、妻や母親であり女性なのだと言う内容を分かりずらく、ある意味オブラートに包んだ作品なのかなと。何より浮気する様なロクデナシ男は、息子でも必要無いと…
因みに個人的には、そんな事全く思っていませんので誤解の無いよう。

冒頭カオス説明がある通り、本作に確信を求めようとすると、矛盾が生じてしまいドツボにハマるように思えた。ただ前に記載した様に、ストーリー全てがヒントやメッセージだと思うので、しっかり見て行くと色々な解釈が出来る面白さを感じた。因みにここに記載した内容意外の考察もあるのだが…熱出そうだし、疲れたのでやめます。
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