秀ポン

複製された男の秀ポンのレビュー・感想・評価

複製された男(2013年製作の映画)
2.8
ウォッチパーティーで見た。

何よりもまず主人公に対して、自分のそっくりさんを見つけただけで、あんな人間存在の根底を揺るがすほどのショックを受けるか?と思った。
役者の方の妻も怯えすぎだし。唐突にスワッピングしよう!ってなるのも謎だし。

裏に隠された物語があり、表層の物語は全編通してメタファーでしかないのだとしよう、別にそれはいい。
だとしても表層の物語だけでも楽しめるように話としての魅力を持たせておいて欲しい。でなければ裏の話への興味も湧きようがない。

「この『平成』って漢字、上下逆さに見たら『令和』って漢字に変わるんですよ!」って言われても、字が汚くてそもそも『平成』として読めない。みたいな。

考察を見ることでやっと楽しめる映画だというのなら、この映画を見る必要はなく、あらすじと考察をググればいいだけだ。
理解し難いものを理解し難いという理由でありがたがるのなら、暗号文なんかを眺めていればいいのでは?

なんか攻撃的な書き方になってしまったけど、この世の中に「訳わかんないけど、でも奥に何らかの知性を感じる!」という種類の面白さが存在することは分かる。(円城塔の小説とかは好き)
しかしこの映画にはそれを感じなかった。ドゥニヴィルヌーヴの静謐な空気感の中で支離滅裂なことをされても困る。もっと饒舌に支離滅裂なことを語ってほしい。この辺りはもう文体なんかの趣味の領域なんだろうなという気もする。
つまり僕はもうそろそろ口を閉じた方がいい。
ドゥニヴィルヌーヴの映画はどれも好きなのに(メッセージなんてベスト級に好き)、これだけハマらなかったのが不思議だった。

唐突に挟み込まれる、街を闊歩する巨大蜘蛛の映像なんかは面白かったし、最後の蜘蛛も面白かった。ここらへんは「メッセージ」にも通じる演出。(僕には蜘蛛が恥ずかしがってるように見えたけど、一緒に見た友人には威嚇しているように見えたらしい。ロールシャッハテストみたいで面白い。)

講師の方のオドオドしたジェイクギレンホールが可愛かった。
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