明石です

悪魔の起源 ジンの明石ですのレビュー・感想・評価

悪魔の起源 ジン(2013年製作の映画)
5.0
子供を亡くしたショックを癒すため、アメリカを出て祖国UAEに帰国してきた夫婦。しかし彼らの住むことになった超高層ビルは、悪霊ジンの呪いが残るいわくつきの土地に建てられたビルだった!!前作から7年の雌伏の時を経て、突如UAEで撮られたトビーフーパーの遺作。もうこれより後はないのでココロして見た。

アラビアのロレンスみたいな格好をした地元民が砂漠の真ん中でジンにぶっ殺されるオープニングから最高。そしてその土地に建てられた超高層ビルに向かう主人公たちへの繋がるストーリーも見事で、雨の降る陰鬱なNYの風景を映し、UAEに飛んで、東京並みに都会なアブダビを経たあとは、霧深い砂漠の中にぽつんと佇む怪しさ満点の新居へ。ホラー映画的な美しいが詰まった映像に序盤からテンションアゲアゲでした。

建物内の監視カメラに映る、黒い影が廊下を這いつくばって自分の部屋に入っていく映像が怖すぎる。ビニール袋から出てきたばかりの伽耶子を思わせる動きで、しかもこの影しか見せない演出。Jホラーを思わせる抑制の効いたタッチは、フーパー監督ここにきて新境地か!という喜びにあわや包まれそうになった、、このしっとりした高湿度な恐怖感が堪らんのです。

仕事を辞めてイヤイヤ夫の転任先に着いてきた挙句、いわくつきの新居に籠らざるを得ないアンハサウェイ似の主人公に同情しちゃう笑。そして新居に籠る中盤辺りから、シンセに不気味な呪文、民族音楽をミックスした、フーパー映画らしいハイクオリティなスコアが畳み掛けだす。子供も仕事も失ってなりたくもない主婦になり、隣人は(これまたこの人の映画らしい)全く会話の噛み合わない超変人ときた。嫌だなあ。しかもジンまで出てきちゃう!てかジンって誰よ!!

と思っていたら、まさかのアンハサウェイ(似の主人公)が子供を●していたことが明らかに。なんと彼らは他でもないジンの子供を身籠っていた!!そんな夫婦がジンのいる土地に帰ってきてしまうとは不運ですねえ(実はちゃんと伏線アリ)。さらにマンション内の隣人たちが出てくるや、ゴカイの盛ったサラダを出されたりと気色悪さ満点で、アラビア版(というかトビーフーパー版)ローズマリーの赤ちゃんと言いたくなるような、これまたじめじめしたイヤ〜な雰囲気。

しかしそれを砂漠の真ん中に立つ超高層ビルというスケール感でやって見せるところはさすがで、実はこの建物〇〇だった!という終盤の種明かしも驚かされる。冒頭からちゃんと伏線が貼られてるからカタルシスもひとしおだし、夫にも妻にもどちらも秘密があったという終盤の畳み掛けは勢いあって素直に驚いた。恐怖の出どころに対する説明に軸足を置かず、スピード感ある映像で魅せるフーパー節が炸裂してますね。

中盤で夫が怪異に巻き込まれたりする展開はラストから遡ると少し齟齬があるような気はするものの、私的には、ラストで明かされる謎に主人公たち自身も驚いてるのだと思うと、十分自然な気がした。それに終盤でジンが本格的に姿を現してからのノンストップホラーな勢いが素晴らしい。最後に大きな花火を打ち上げてくれたトビーフーパー監督に特大の拍手です。遺作まで見終わった上で、改めてご冥福をお祈りします。
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