おらんだ

繕い裁つ人のおらんだのレビュー・感想・評価

繕い裁つ人(2015年製作の映画)
3.6
神戸の坂の上の小さな洋風の一軒家で、市江は「南洋裁店」を営んでいた。彼女の繊細な技術で仕立てられる洋服は地元の住民達に愛され、彼女も同様に愛される存在であった。そんな折、彼女の元にブランド化の話がやってくるのだが、職人気質の市江は素っ気なく断ってしまう。

人々に愛される、先代である祖母のデザインを受け継ぐという思いと、自身のデザインで新たなスタートを切りたいという思いの狭間で揺れる洋裁店の女性の成長を描く。

雰囲気は全体的にレトロでノスタルジック。一場面、一場面が絵画のような美しさを見せる。進行ペースも緩やかなので、本当に一枚一枚絵を鑑賞しているかの様。洋服のデザインの美しさ、鮮やかな色彩、カフスやボタンなど小物の可愛らしさ。実際に入ってみたくなるような魅力を感じさせる。
一番魅入るような美しさを感じたのは、冒頭の市江がミシンに向かい仕事をするシーン。外からの光が暖かく、神々しささえ感じさせる。

神戸というロケーションもエッセンスとなっている。古くから西洋文化が根ざし、街並みの中にナチュラルに異国情緒が混在する街。それ故に現代に不釣り合いな主人公の「オシャレ」な格好も不恰好に浮くことなく、風景にマッチしている。更に、今の女子高生が着るような服を逆にキッチュに見せる効果もある。神戸(北野、元町、ハーバー方面)でなければ成立しない画だった。

一部、鬱陶しく感じたのはデパートの営業マンの藤井。ブランド化の話を幾度となく持ちかけるのだが、全て上から目線で鼻につく。その上、仄かな恋愛パートのようなものも発生するので、話の腰を折られて仕方が無い。邪魔。三浦貴大じゃなかったらもっと嫌になってた。

最大の見所は洋服の美しさ。生活に深く根ざしながら、普段の生活から一線を引いた自分をも演出できる特別なアイテムであると気づかされた。洋服の魅力が満載の今作。一生着続ける事ができる一張羅を一着、自分も誂えたくなった。