JINO

マダム・イン・ニューヨークのJINOのレビュー・感想・評価

4.0
自分を大切にし、身近な人を大切にすれば、人生はきっと良くなる──

人は皆なにかの劣等感を抱えながら、その劣等感を避けながら、自分の居場所を見つけようとしている。主人公シャシも、妻として、そして周囲から絶賛される手作りのお菓子によって、自分の居場所を見つけている。ただ、自らの価値が"それだけ"なのかと悟ったときの絶望感は計り知れない。

勇気を持ってチャレンジし、その最中で起きる苦悩に対して抗い、家庭という元の居場所に籠るという選択を選ばず、必死に英会話教室という"外の世界"に希望を見出す姿に心を打たれる。

夫や娘、空港の検査員、カフェの店員は、嫌な人達として描かれるのだが「こんな夫いるよね」「こんな店員いるよね」という既視感がある。残念ながら、それは演出ではなく、実際に世の中で起こるリアルであり、そんな周囲を変えることはそう簡単ではない(本作はそこの解決はしていない)。結局は、自らを大切にし、自らが他者を大切にすることが、人生を良くする近道であることを教えてくれる。

教室に行けなかったなかで、電話から聞こえてくるクラスメイトの声を聞いて、ときめくシャシのシーンがとても印象的だった。人間にとって、自分を認めてくれる他者との関わりがどれほど重要であるかを知る。
自分の事を好きだと言ってくれた人に、「自分に自信を持たせてくれてありがとう」と言って振るシャシに感銘する。その振り方は反則です!

もっと自分を大事にしよう、もっと身近な人を大事にしよう──そう思わせてくれる映画だ。
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