RYOBEER

マダム・イン・ニューヨークのRYOBEERのレビュー・感想・評価

3.9
この作品では「言語」という切り口で語られているけど、人は、人が人であるための尊厳を「差別」という形でいとも容易く奪ってしまう。
昔から根付き、また今日的なテーマであり続けていることからも分かるように、それは(例え加害者側が意識せずとも)至る所に存在する。もっとも、差別する側の人間は本人を良く知りもしない他人である場合が殆どだと思う。

もしそれが、本来ならば対等であり、そこから真っ先に守ってあげるべきはずの存在である"家族"だった場合…その苦しみ、悲しみは計り知れない。

まさに切望と呼ぶに相応しい、シャシの最後のスピーチには、涙してしまった。

直後の娘の表情は、母親の苦しみに気付き、自身の今までの愚かな言動を恥じ、悔いたものだと思いたい…。(後でちゃんと謝ったんやろな?こいつ…)

テーマ自体は決して軽くはない筈なのに、作品の持つ雰囲気や、合間に挟まれる音楽(最初の方に流れた、シャシが旦那に対する愛情を歌った曲、なんでボーカル男やねん!笑)、そしてなんといってもシャシを演じた女優さんのチャーミングさのおかげで楽しい気持ちで鑑賞でき、しかしそれでいてテーマはしっかりと汲み取れるつくりになっていました。


あ!一つだけどうしても言いたい事が…

最後はシャシとローランのハグが見たかったなぁ。旦那に見せつけてやりたかったし、シャシが自分の居場所の大切さをわかっていたとしても、お互いの淡い恋心はそこが落とし所であって欲しかったです。
冒頭、旦那と仕事仲間(?)のハグシーンは絶対その伏線だと思ってたのに…

ともあれ、素晴らしい映画でした。
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