こたつむり

マダム・イン・ニューヨークのこたつむりのレビュー・感想・評価

4.2
★ フラペチーノを飲みながらNYを歩きたい

とても意欲的な作品だと思います。
英語が話せない女性が一人でニューヨークを訪れる物語…ということで、題材的に目新しさはないのですが、精神的に攻め込んでいるのです。

何しろ、男性上位社会の印象が強いインド。
女性が自分の意思で歩むのは、他の国よりも反発が大きいでしょうからね。人妻である主人公に想いを寄せるフランス人も登場しますし「国の文化として大丈夫なのか」なんて変な部分でドキドキしたのです。

また、主人公の《夫》が投げかける言葉がね。
男性の悪い部分を煮詰めたような内容で…思わず我が身を振り返りましたよ。正直なところ《夫》の気持ちも分かりますので…無自覚で投げた辛辣な言葉ほど手に負えませんよね…。はい。自戒します。

ただ、本作で素晴らしいのは、男女の対立構造に陥ってギスギスするのではなく。ふんわりと優しい味付けで整えて、強さと柔らかさを兼ね備えた物語に仕上げたことなのです。

特に“英会話教室の面々”が素敵でしたね。
「アメリカ社会で英語が使えない」という共通点で結ばれているから、同級生…というよりも戦友。ほんの短い間の付き合いでも“友情”が存在するのですね。やはり、人とのつながりは大切です。

あと、インド映画と言えば歌と踊り。
どれもこれもが刺激的で心浮き立つ楽曲なので、作品が素敵な色で彩られていました。このポジティブなパワーこそがインドの原動力。色々と怖い話を耳にする国ですが、とても惹かれる国でもあるのです。

まあ、そんなわけで。
自分の足で立ち、自分の頭で考え、自分で自分を取り戻していく物語。綺麗にまとまっているので、老若男女問わずオススメできる作品です。主人公の美しさを堪能するだけでも鑑賞する価値がありますよ(鑑賞後に知りましたが、今年の2月に不慮の事故で亡くなられているのですね…。お悔やみを申し上げます)。

最後に余談として。
英会話教室で出会ったメキシコ人の女性。
どうしてもジョン・トラボルタの女装姿(『ヘアスプレー』)を連想してしまい、違った意味でニヤニヤが止まりませんでした。
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