エディ

HUNGER ハンガーのエディのレビュー・感想・評価

HUNGER ハンガー(2008年製作の映画)
1.9
★北アイルランドの独立運動をしていた主人公たちのハンガーストライキや糞尿による「体制への抵抗」を描いた映画。
如何にも「意識高い系」であるこの映画を高評価することは簡単だが、自分は全く評価できなかった。

舞台は1980年前半の英国サッチャー政権の時代に、英国から独立を企てる北アイルランドの闘志たちIRAが主人公。
彼らは独立運動をする片っ端から捕えられ、劣悪な環境で長期の牢獄生活を送っているのだ。そんな中で、IRAの精神的指導者であるサンズは牢獄から発することができるメッセージとしてのハンガーストライキや糞尿アピールを何度も行うのだが成果を得られなかった。。。

日本人にはなじみが薄いIRAを描いた映画で、自分は普通の日本人よりIRAの問題を知っていると思うが、それでも映画を観ただけでは背景を理解することが出来なかった。

映画は投獄者を痛めつける看守たちと、薄暗く汚い牢獄で自身の糞を壁にこびりつけるシーンやその画像が頻出するが、それをせざるをえなかった背景や経緯は全く触れられない。
また、囚人たちがハンガーストライキが自分達ができる最大の反政府活動だということを理解しあった上で、厳重な警備の中で連絡を取り合って反政府活動の貫徹をしようという動機は一切触れられない。

なので、普通に観ていると、意味があるとは思えない裸での生活を主張していた男が「知らない間にハンガーストライキをしている」として見えないだろう。

これを、「アイルランドが置かれた困難を理解していない。勉強不足だ。映画を観る前に、もっと歴史を勉強すべきだ」というのは簡単だ。

しかし、だったらなぜこの映画を作った?映画ってそれで良いのか?と思ってしまう。

奴隷解放を望む黒人の活動を描いた数多の映画が感動を呼ぶのは、彼らが置かれた苦汁の人生を丁寧に描き、それを知らない観客も自身が彼らの立場になったら?と考えさせられるからだろう。

しかし、この映画は普通の人が観ても、非常にわかりにくいのだ。

糞を壁になすりつけて模様をつけるのに何の意味があるのか?なんでも抵抗をして投獄年数を長くするよりもっと建設的なアピールができないのか?と思ってしまうのだ。

特に、主人公であるサンズが、そこまでして無駄な戦いをする動機をきちんと描いていないので、普通に観ているだけでは「突拍子もない行動を繰り返す狂信主義者」にしか思えないだろう。

その意味では、この映画は「同じ思想に染まった仲間うちに見せる士気高揚の映画」としては十分だが、北アイルランドの問題を普通の人たちにも知ってほしいという趣旨では著しく不十分だと思う。

この映画を一般向けに作った理由は、北アイルランド独立闘争の闘志たちを他の人たちにも理解してほしいと思ったからだろう?だったらなぜ、普通の人でも共感できるような筋立てにしなかったのかと思うと、この映画の脚本の独りよがりで独善的なスタイルに腹立ちを覚えてしまったのだ。

「映画を観る前にIRAについてもっと勉強しろ」・・・それは違うでしょ?

賛同者のみを対象にした映画でない以上は、予備知識がない普通の人が見ても、観終わったあとにこの問題を十分に理解し共感させることが肝要なんじゃないのかい?

最後まで観ても、毛布と糞尿とハンガーストライキでは何も変わらず、他にもっと効果的な手段があるのに・・・と思ってしまった。申し訳ないが、IRAの活動が失敗したのは理解できた。