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はなればなれにのmasayaanのレビュー・感想・評価

はなればなれに(2012年製作の映画)
3.0
ひとまず言えそうなのは、これは「アクションの」映画である、ということである。もちろんこれは、映画の定義からすれば単なるトートロジーに過ぎないのだが、それが今の時代に少しでも新鮮さを放ってしまうとすれば、本作の戦略的な時代錯誤の勝利という事なんだろう。

序盤こそ、俳優たちのド下手な演技や、劇における会話というよりは、言わせたい文句を言わせただけのような(この辺のことはゴダールの『映画史』で再三述べられているので割愛する)科白に違和感を拭えないものの、やがて多くの人は、俳優たちが常に画面の中を動き回っている事に気付くだろう。

実際、この映画で重視されるのは、感動的な脚本や高尚な主題や劇的な科白回しや俳優の奇跡的な熱演、といったゲイジュツ神話にありがちなロマン主義ではなく、俳優たちの仕草、行動、科白の中身よりも科白の喋り方などであり、それらの動きによって、ほぼすべての状況とその推移は説明される。

とはいえ、単なるサイレント志向なのかと言えばそうではなく、この映画ではアクションを省いた「効果音」による状況説明が幾度となく反復されている。それは単純に経費の節約にも一役買っているが、本作の志向するカットアップ的なツギハギ感にとってもいいアクセントになっている。
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