R

神は死んだのかのRのレビュー・感想・評価

神は死んだのか(2014年製作の映画)
2.8
ボロカスの評価ばかり目にした後に見たので、逆にそんなひどい映画かなーと思ってしまった笑 全体的には結構面白いんじゃないかな。とはいえ、ボクはクリスチャンではございませんし、クリスチャンが宇宙の真理を明かしているともぜんぜん思えない。唯一絶対の人格神を信じることに、危険な面も多々あると思ってる。本作で特に興味深いなと思ったのは、メインテーマとなってる、大学の教授との神は死んだ VS 神は死んでいない、のディベート、ではない。最初は面白そうに思えるけど、結局どっち側も何か目新しい議論を展開するわけではない。よくある議論以上でも以下でもないし、全然深みもない。普段哲学や宗教に触れてない人には刺激的なのかもやけど、ボクは哲学や宗教についてコンスタントに勉強し、教授したりもしてるので、そういう立場からすると、まぁフツー。けど、感動的な点もあります。それは自由意志という一点。教授は学期最初の授業のド頭で、授業を受ける前提として、学生全員にGod is deadと書くことを強制するのだが、これは完全に意見の押しつけであり、親が子どもにクリスチャニティを押しつけるのと何ら変わらない。ムスリムダディが娘にイスラム教を押しつけるシーンがあるが、これも同じこと。加えて、授業で神の存在を弁護する主人公ジョシュに、彼女が「あたしらの恋愛成就のためにそれ辞めてよね」と命じ、やめなかったジョシュを問答無用でフる。これも押しつけ。特にこの女は最悪。恋愛成就のために相手に情熱を消すことを強要するなら、そんな恋愛ははやく捨てた方がよい。これは宗教に限らず現実よく起こることです。結婚のために相手に夢を捨てさせるくらいなら、女性の皆さん、別れてあげてください。その方がずっとお互いのためになるよ。自分が真にやりたいことを貫くことこそ尊いと個人的には思う。そういう意味で、自由意志ほど大切なものはなく、ジョシュにはすごく好感が持てる。謙虚で熱心で爽やかなイケメンやし。喜んで友人でも恋人でもなりたいと思うタイプの人間です。信条は異なるけど。人間の好き嫌いにそんなものは関係ない。もう一点、これこそ真に興味深いと思うのだけど、それは、信仰がない人たちの様子。かなりデフォルメされてるので演出が鼻につきはするのだが、信仰がない、つまり信じるものがない人間にとっては、人生で大事なものは、パッと目で見て分かる単純な簡単なもの、たとえば財産、地位、成功、美貌などしかなくなってしまう。これはかなり真実でしょう。社会人になって何年も経ってる大人ならわかるやろけど、たとえ友だちや配偶者といったところで、結局みんな他人であって、彼らさえ心の底から信じる力って年々衰えていく。子どもがいるじゃないか、と思う人もいるかもしれないが、子どもだって自分の人生を生きるために、だんだん親から離れていく、これも残酷だが認めざるを得ない真実です。そして、年をとればとるほど、自分の未来の可能性がリアルに閉じていってしまう。じゃあ、財産、地位、成功などがあれば、人間の幸福は保証されるのか、というと、これも否。結局人間は病いと死からは逃れられない。それらに対峙するとき、外界の飾りは何の役にも立たない。たとえば本作の主人公のように、ガン宣告された人間は、自分の全生命が死を拒絶し、否認、憤怒、おすがり、諦念、鬱、絶望、などありとあらゆるはげしい感情に心を蝕まれる。そういう話、しばしば耳にします。そのような状況になったとき、一体人間は何を信じればよいのだろう。自分を食いつぶそうとするネガティビティという悪魔にどう挑んでいくのか。衰えゆく信じる力をどう強化していけばよいのか。本作ではその結論に神を位置づけます。そのあまりに粗末な結論づけと稚拙な演出は、すさまじい残念さを感じさせるけど、神を信じるというのも確かにひとつの手だとは思います。だって何もないことほど恐ろしいものはない。人間の潜在意識は、自分という存在の消滅に対して、すさまじい恐怖を発動させるようプログラミングされてる。これは事実。ただ恐怖に震えながら死を迎える侘しさほど苦痛を伴うものはないでしょう。だったらクリスチャニティでも、何もないより全然マシ。ただ、ボク個人としては、キリスト教は穴が多いので、もっといいモノ、最高の哲学、完全無欠な理論を、できるだけはやく探し求め、できるだけはやく見つけるのがよいと思う。めちゃめちゃ難事ではあるけれども。とあるフランスの哲学者は「哲学を極めることは死を学ぶこと」と語り、とある日本のお坊さんは「まず臨終の事を習うて後に他事を習うべし」と語っている。生と死とは、コインの裏表のように切っても切り離せない対概念なので、死について理解しないことは、生を理解しないことであり、死を無視することは生を無視することと全く同じである。そういう意味において、本作は見ておく価値がないわけではないと思う。ただ、まー日本のテレビドラマ級の安っぽさにはガックシ。けど、評判のすこぶる悪い劇中音楽、ボクは音楽すごく好きなので、本作の曲すごくいいと思ったよ笑 黒人ボーカルの声すばらしかったし、ドラムかっこよかった。最後のGod’s not dead運動は…んー、アイデアとしてはテキトーすぎじゃない? そんな大事なもん布教すんならもっと慎重で綿密な計画立てんかいや。ちなみにこんな映画作るな、とか言ってる人たちもいるみたいやけど、どんな映画つくるかは完全に自由であるべきやと思う。最初から見ないでおくのも、途中で見るのやめるのも、これ見て信仰し始めるも、時間の無駄やったとケチつけるも、こっち次第。見たくなきゃ見なけりゃいい。
R

R