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浮城のbluemercenaryのレビュー・感想・評価

浮城(2012年製作の映画)
3.7
第2次大戦後の香港。
漁業を営み、虱民と呼ばれる水上生活者夫婦の子供としてワーチュンは育った。
彼は英香混血児。生後間もなく実母から買い取られていた。
牧師の勧めと育ての母の理解あって、ワーチュンは陸に上がり夜学で勉強に励んだ。

やがて、雑用係として東インド会社に就職したワーチュン。
英国人上司から差別されながらもコツコツと努力を積み重ね出世を重ねる。
彼を認める上司、仕事のパートナーにも恵まれ、遂に重役に。
そんな彼だが、常に「自分は何者なんだ」という葛藤を抱えていた・・・・・。

ワ―チェンの出自から半生が香港の歴史そのもの。
中国と英国の文化が入り混じりアイデンティティーが揺れた。
60年代末には英国排斥左傾運動が起こり、やがては嫌中国に振れたイデオロギー。
中国返還された今も尚影を引きずっていると云う。

永らくアイデンティティに苦しんできたのはワーチェンも同じ。
その答えは育ての母親が示していた―――運命は受け入れるもの。
むしろ息子が成功してから、母親は別の苦しみを抱えることになる―――ここは壮絶(涙)。

割と平坦に淡々と流れる物語。
エンディングで「実話に基づいた物語である」のクレジット。
そこで「えっ!?」
実際は親戚関係にあった二人の人物の話で、これを一人にして脚色したと云う。
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