Shelby

ビッグ・アイズのShelbyのレビュー・感想・評価

ビッグ・アイズ(2014年製作の映画)
3.0
1950年代後半のアメリカ。離婚を決意し、幼い娘とともにサンフランシスコへとやって来たマーガレット(エイミー・アダムス)。生活のために仕事を見つけなければならなかったが、彼女に出来るのは絵を描くことだけ。
家具工場で働くかたわら、ノースビーチで似顔絵描きを始めた彼女は、そこで同じく画家だと名乗るウォルター(クリストフ・ヴァルツ)と出会って恋におちる。ほどなくして結婚したふたりだったが、彼女が描いた瞳の大きな子供の絵“ビッグ・アイズ”が世間の注目を集めると、ウォルターは自分の作品だと偽って大々的な宣伝を始めてしまう。マーガレットは自分の作品だと言えない悶々とした日々を送り続け、遂に世間に自分の作品だということを公表しようと決意し…

実話がベースになっているだけあって、作者であるマーガレットの承認欲求や劣等感、子を養う為の自己犠牲的苦悩、そして最終的にエホバの証人に救いを求めた部分も含めてリアルさを肌で感じられる作品。しかしながら、ティム・バートンならではのファンタジーな世界観や、幻想的映像など感じられないような、正直にいえば「凡庸」な作品だった。ティム・バートンの作品というレッテルが貼られたまま鑑賞したものだから、期待していた御伽噺のような世界観とは違ったので、面食らったというのが正直なところ。

まだこの時代の女性は、地位そのものが低く声を上げることがそうそう無かった時代。マーガレットが感情を押し殺す毎日は、どれほど辛かったか。娘のため、生活のためと、作り手本人が、自分のアイデンティティである作品に名を刻めないことが、どれほどの苦痛だったか。私は勿論作品を生み出す生産者側ではないので、決してその苦痛を分かち合えることは出来ないが、そんな私でも容易に想像がつく。

実在のモデルとなったマーガレット本人は、「クリストフ・ヴァルツの姿、声、行動──すべてがウォルターそのものだったの。」と映画を観た時に受けた衝撃を明かしていたという。マーガレット本人にそこまで言わしめる役作りの徹底ぶりは、本当に素晴らしい。実話だからこそ、単調な映画ではあったが、私にとってティム・バートン監督の新境地を見せてもらった。
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