ロベール・ブレッソン監督がシネマトグラフで描いたジャンヌ・ダルク。カール・TH・ドライヤー監督の「裁かるるジャンヌ」と同じくジャンヌ・ダルク処刑裁判が描かれている。
「裁かるるジャンヌ」が顔のクローズアップなら、こちらは足のクローズアップ。この関係でも分かるように、本作には「裁かるるジャンヌ」のような訴えかけてくるような強烈なインパクトは無いが、ブレッソン監督らしい切り詰めた省略美に溢れている。鑑賞者へ大きくアピールすることは一切無く、あくまでもあるがまま。シネマトグラフの自然体でささやかな魅力を味わうことが出来る。
このように両作の魅力は対照的。心に強く訴えかけてくるような強烈なインパクトの前衛的手法で魅せる「裁かるるジャンヌ」。余計なものを自然体まで削ぎ落とした省略的な手法で魅せる本作。どちらも素晴らしくて優劣はつけられないが、やはりブレッソン監督の省略的な芸術美は大好きだ。いつかまた観比べたい。