このレビューはネタバレを含みます
ステージ上で繰り広げられる「男」と「女」のシーソーゲーム。
題名だけ聞くと個人的には真っ先にバナナジャケの同名曲を連想してしまうが(劇中でもそのくだり有)今作は同名の戯曲が原作でその戯曲自体はマゾヒズムの語源にもなっているレオポルド・フォン・ザッヘル・マゾッホの小説『毛皮を着たヴィーナス』に基づいている。
今作はポランスキー監督前作の『大人のけんか』同様に舞台原作のシチュエーションドラマで、出演者が4人→2人になってより会話劇の要素が強くなっており、舞台設定も文字通りステージ上なので観劇しているような錯覚にも陥る構造となっている。
謎の女優ワンダ(そもそも女優なのかどうかも怪しい)独自の解釈による演技に触発され演出家トマの芝居も次第に熱を帯びてくると段々と現実と虚構、本音と建前、主人と奴隷、演出家と女優など相反する関係性が曖昧になってきてどこまでがオーディションでどこまでが現実なのか、遂には男と女という性別すらも超越してしていくという仰天な展開に。
ラスト近くで役柄が入れ替わったのに主従関係が変化しなかった所にトマの今迄抑圧されていた潜在意識、隠れていた性癖が露見。口紅を塗りハイヒールを履いたトマの表情は恍惚と幸福感に覆われていた。もしかすると自分もその時同じ表情をしていたのだろうか…?