けんぼー

仁義なき戦い 代理戦争のけんぼーのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 代理戦争(1973年製作の映画)
4.1
2020年鑑賞194本目。
ヤクザ映画の頂点がさらにスケールアップ。まだ面白くなるとは・・・。恐るべし笠原和夫。そして「盃システム」の面白さを再認識。

1作目ではヤクザ組織同士の思惑が絡み合う、重厚で複雑な群像劇を描き、2作目の「広島死闘篇」では二人のヤクザに焦点を当て、激動の時代に散っていった男たちを熱く描いた脚本家・笠原和夫。
本作はまたもや群像劇で、いよいよヤクザ組織最大の抗争「広島事件」の核心に迫る。

改めて脚本家・笠原和夫の凄みがわかる作品である。
ヤクザ組織同士だけでなく、広能たちヤクザ個人の謀略が渦巻き、裏切りが裏切りを呼ぶ複雑怪奇な抗争をよくここまでまとめ上げたと感心せずにはいられない。

そしてふと、この「仁義なき戦い」の面白さを支えている一因となっているヤクザのシステムについて思いを巡らせてみた。
それは「盃(さかずき)」である。

本シリーズで描かれるヤクザ同士の抗争は、相手を殺した奴が勝ち、強いものが勝ち、というような単純なものではなく、その中で様々な思惑が交錯しているため、複雑だし一筋縄ではいかない。
そのような、物語を複雑に入り組ませている思惑や謀略に大きく絡んでくるのが「盃」なのである。
ヤクザたちは「兄弟分の盃」「親子分の盃」などを交わし、ある種の契約というべきか、後ろ盾のようなものを得る。その盃が足枷となって自分の思うように動けなくなったり、逆に盃をうまく利用して形勢を有利に進めたり、事件を丸く収めたりすることもある。

本シリーズで描かれる「広島事件」という抗争の中に感じる面白みはこの「盃システム」を媒介した陣取りゲーム的な部分が大きいと思った。これは世界のギャングにはない、日本のヤクザが持つ特有の面白さではないだろうか。
そしてこのような「盃システム」はドライな見方をするとばかばかしくも思えるのだが、盃で結ばれた絆を守ろうとするからこそ生まれる熱い男のドラマがあることも事実。
なーんてことを考えたのでした。

ついに次作で「広島事件」の熱い攻防がピークを迎える。楽しみだ。

2020/11/9観賞