父母ともに癌

仁義なき戦い 代理戦争の父母ともに癌のレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 代理戦争(1973年製作の映画)
4.7
広島一のやくざ組織の親分が引退し、その跡目を争う男たちがより強い組織の後ろ盾を得ようとすることによって広島で抗争、代理戦争が燃え上がっていく話。

いや、最高に面白いけど、パワーバランスの変化や後ろ盾やら縁の取り結びのめまぐるしさは半端ないな、と思う。政治劇。
この政治劇を演じるのがやくざ達で、感情を発露しまくるのですごくダイナミック。怒鳴りあい殴り合い殺し合いの政治劇。
誇りを踏みにじったり、踏みにじられたり、約束を破られたり裏切られたり裏切ったり内通したりするたびに役者が輝いて、その密度の濃さたるや大変なもの。

キャラクターに仁義が無くなってくるのも面白い。
仁義派は菅原文太と渡瀬恒彦、成田三樹夫くらい。仁義無き派は金子信雄、田中邦衛、室田日出男、加藤武を始めうなりをあげるくらい沢山いて、そういう人間の弱さからでる滑稽さは人間を描く際の醍醐味だと私は思っていて、その醍醐味は最高によく出ている映画だと思う。
金子信雄がキャバレーみたいなところで加藤武を面罵するシーンなんて最高だと思う。
金子信雄の「おう、泣かんの、泣かんのよ」の台詞なんてのはあんなに腹が立つ音がよくも人間から出てくるな、なんて思わせるものがある。

渡瀬恒彦は出てくるたびに名シーン。
耳を切り落とすシーン。先生に連れてこられるシーン、オカンに洋モクをあげるシーン、そして何よりあんなに痛そうな死に際。
そこまで話に絡んでいるわけではないが、政治劇故に主要人物の生死の緊張感は無いぶん、生死のドラマを一人で背負わされ、そしてきっちり背負いきっていると思う。

前作、前前作よりも笑えるシーンが多いので、これは相当好きな作品です。

シリーズ最高傑作では。
この映画について誰かと喋りたい人生でした。はあ。
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