華麗なる加齢臭

仁義なき戦い 代理戦争の華麗なる加齢臭のレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 代理戦争(1973年製作の映画)
5.0
【広島弁のシェイクスピア】
私にとって、東映実録シリーズの最高峰「仁義なき戦い」は、全5作品で構成された一つの群像劇だ。それ故、5作品からベストを探すのは至難の業であるが、どうしてもと言えばストーリーや構成では「代理戦争」、後述するセリフの出来では「頂上作戦」を選択する。

仁義なき戦いのファンは数多くいるが、その多くは最初、主演・菅原文太に魅了され、次に監督・深作欣二の名前を知り、やがて鑑賞を重ねれば重ねるほどに、この映画の魅力は、脚本・笠原和夫によるものだと実感する。
仁義なき戦いはもとより、笠原和夫氏は全ての作品で綿密な取材と全身全霊を込めセリフを産み出し、ホン(台本)を書き上げた。それは、映画人として人生を過ごした間、腎臓、胃、脾臓など臓器を摘出しながら数多くのホンを書き、東映京都撮影所長の岡田茂(のちの東映社長)が「笠原君は身を削るような取材と執筆の結果、病気になった人です。映画界の負傷兵です」と述べたように、まさに命をかけてホンを書き続けたのだ。

仁義なき戦いは、公開から50年近く経過しても関連書籍が発刊され続け、そこには必ずセリフについて触れられている。まさに広島弁のシェイクスピアだ。
「広島極道は、芋かもしれんが、旅の風下にたったことはいっぺんもないんで」こんなシビレる日本語のセリフは二度と出会うことはないだろう。