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アウェイデイズのCOYIのレビュー・感想・評価

アウェイデイズ(2009年製作の映画)
3.3
英国ユースカルトモノにしては地味めな印象で、フットボールカジュアルを扱うウケの良さそうな映画なら他に良い作品はあると思うけど、待望の日本初公開。Sweet Sixteenやトレインスポッティングより人生への希望が少しある、Quadrophenia系譜の話。第三次産業下っ端労働者階級のやり場のない、生まれた場所から逃れられない辛さをドラッグやセックスやフットボールバイオレンスで発散する英国青春映画のお決まりプロット。アートスクールに通えるミドルクラス、カウンシルフラットに生まれ育ったワーキングクラスの両者には人生を選択できるかできないかの階級差があり、文化を享受する上で大きな隔たりがある。中産階級のフーリガニズムへの憧れ、労働者階級のポストパンクへの憧憬がお互いを引き寄せ合うも、結局は本来彼らが持つ性質には相容れず、お互いが文化的な"アウェイ"となり、"日々"をすれ違いながら過ごす。英国特有の階級差だけでなく、同性愛要素も絡まり複雑で繊細な人間模様を描いている。作中の79年はホモフォビアが根強く、特にフットボールフーリガンのようなマチズモ全開の世界においては忌むべき存在で、カミングアウトできずに苦しみを抱え、部屋にロープを吊るし常に死を意識していた。
最後の告解で繊細なバランスで保たれていた2人の関係が崩れ落ちるシーンは観ていて苦しくなった。
映画的に面白かったかと言うと、まあふつう。思い入れがあるカルチャーの映画だから、ファッションや言葉なんかのディティールを楽しめて観れたけど、そうでない人はキツいかもしれん。
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