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ナチュラルのikumuraのレビュー・感想・評価

ナチュラル(1984年製作の映画)
3.4
【アメリカン・ドリームとしてのベースボール】
MLBチームがない街にいるせいか、アメリカにいても野球人気をあまり実感できない。
むしろアメフトの方が日本での野球に近い感覚がある
(オヤジが息子にやらせたい、みたいな意味でも)。
好きな人は好きだけど、なんかチンタラノンビリやってる退屈なスポーツ、
まあ暇な日にスタジアムでダラダラビール飲みながら観戦するのも悪くないね、
という人が多い気がする。あくまでぼくの周りでの話ですが。

それを踏まえて、この映画を観ると、
あ、やっぱ野球って、アメリカ人が夢を託して夢中になるような、
そういうスポーツだった頃もあったんだな、と実感できる。
作られたのは80年代、舞台は20-30年代かな?
球場でも、紳士はスーツ、あるいは労働者がハンチング帽を被って、淑女も着飾って、
当時の社会秩序が垣間見られるところも面白い。

ストーリーは、野球の天才児・ロイが大リーグのテストを受けに旅立つものの、
数奇な運命に巻き込まれ、16年後、35歳にしてやっと夢の舞台に立つ・・・
という、いわばオールドルーキーモノなのだが、
悪徳オーナーや野球賭博も絡んで、
スポーツというものが抱えていた闇、というか、
アメリカ社会というものがまだまだ荒削りだった時代を感じさせる。
選手たち自身も品行方正とは言えないし
(まあこれは今でもそういうノリはありますが)
ロイにしつこく付きまとう記者も、
この職業がまだまだ蔑まれていた時代を思い起こさせるゲスさ。

で、その中で、だからこそ、
ロバートレッドフォード演じるロイのプレーが輝く。
なんなんだこんな都合よく、と思いつつも、
豪快なスイング、それによって作られる伝説には目を見張らされる。
ラジオの時代だからこそ、このストーリーを共有した人たちの間で、
伝説はさらに大きくなっていったんだろうな、と。
彼に励まされる少年たちの目の輝きが印象的。

イマイチだったのは、キム・ベイシンガー演じる悪女、メモの存在。
彼女が悪いわけではないのだが、
ロイがなんでこんな女に翻弄されるのかがよく分からない。
まあそういう弱さも抱えている、というのがストーリーの鍵になってるんだけど、
でも他のところでの(オールドルーキーとしての)ロイは基本野球バカでクソマジメに見えるんだよね。
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