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お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいましたのeulogist2001のレビュー・感想・評価

3.6
日本映画専門チャンネル

完全に聴かない音楽の筆頭ジャンルであるザ・スターリンの遠藤ミチローのセルフドキュメンタリー。

しかし冒頭から大きくイメージを裏切られる。過激な歌詞やパフォーマンスとは真逆の温厚な語り口やひと柄が滲み出てる。むしろ穏やかな知性や繊細なくらいのナイーブさを感じる。

彼自身の自己分析などをもとに独断的に要約すれば・・。
福島の二本松という田舎で母親に大事に育てられた繊細で少し頭の良いコが田舎の有名な国立大学に入り、そうした環境に違和感を持ち、他者との関係性や世界観をこじらせたり、また自身のアイデンティティに悩み、中途半端な自分を否定したいが為に過激な表現でバランスを取り、旅の中に居場所を求める。

中途半端な自分が嫌いでもあり、そうでありながらもそこが自分らしさの軸である事もわかりながら。

時代背景もあるだろうけれど、吉本隆明からの島尾敏雄を愛読していたり、原発反対などの活動などまさに自己と世界のありように悩むインテリ文化人なのではないか。詩人の三角みづ紀との対談を入れるところなども「ミュージシャン」というよりは「文化人」としての矜持にも見えた。

作中、三角みづ紀が家族を持たないのは、意思を持った他者が側にいるのは耐えられないからと言っていたのには強く同意する。わがままだからというよりは、そうした意思との対立や葛藤、妥協に価値を見出せない(のだろう)。コミュニケーションはある意味「支配・被支配」の関係を常に内包するので、それに耐えられないという事もある。
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