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ジェニーの肖像のucandoitのレビュー・感想・評価

ジェニーの肖像(1947年製作の映画)
4.5
美しく切ないファンタジー。
1947年の白黒映画です。
時空を超えたロマンスものの走りなのだろうか。
ドビュッシーの名曲がジェニーのテーマ(アラベスクだったか月の光だったか)。
あどけない少女が美しい「永遠」の女性へと成長する。
「慕情」や「終着駅」で主役を演じたジェニファー・ジョーンズです。
ジェニーはファンタジーの世界で愛を知り、画家のアダムス(ジョセフ・コットン)は強いインスピレーションを得る。
親友でアイリッシュ移民のタクシー運転手、画廊の二人、修道院の先生(93歳で「八月の鯨」を」主演したリリアン・ギッシュ)。
出てくる人たちが皆優しく善意にあふれている。
しばらくはドビュッシーを聴くとジーンとしそうだ。
名画だと思います。


備忘録(ネタバレ注意)
売れない貧乏画家のアダムス。 
ありきたりの風景画を画廊に持ち込んでいる。
技術はあるが何かが足りない。
その可能性に興味を持つ画廊の女主人ミス・スピニー。
アダムスは或る夜、セントラルパークでジェニーという美少女と会う。
私はどこから来たのでしょう、と不思議な悲しげな歌を歌う。
両親はとある劇場で綱渡りの芸人をしているという。
しかしその劇場はとっくの昔になくなっている。
彼女は早く大人になるので、待っていてと言い残していなくなる。
彼女のスケッチをミス・スピニーに見せると大変気に入ってもらえる。
画家としての方向が見えた。
ジェニーの肖像を描きたい。
しかし彼女なしではインスピレーションが湧かない。
その後、ジェニーはなんども短時間だがアダムスの前に現れるようになる。
そのたびに大きく美しく成長している。
アダムスは色々調べた結果、彼女は実在の人物で演技中の事故で両親を失い、その後消息を絶ったと知る。
皆悲しげで大きな瞳のジェニーのことを覚えている。
そんな時にまたジェニーが現れ、両親が死んだので修道院に行くことになったと伝える。
アダムスはジェニーをモデルにして肖像画を描き始める。
そしてある日、定められた運命のようにケープ・コッドの灯台で高波にさらわれて死の世界へ戻る。
肖像画の完成を待っていたように。
アダムスにしか見えないミューズ。
そしてジェニーが予言した通り肖像画は美術館に展示され世界中に人が訪れるようになる。
絵の前に佇む3人の少女の会話。

「綺麗な人ね」
「実在の人なのかしら」
「きっと実在の人よ、少なくとも画家にとってはね」

お見事!
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