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ジミーとジョルジュ 心の欠片を探してのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

3.5
【夢分析入門】
今年のカンヌ国際映画祭でアルノー・デプレシャン監督の「Les fantômes d’Ismaël」が上映されるとのことなので、Netflixで彼の過去作「ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して」を観てみた。


☆「ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して」あらすじ
アメリカ先住民のジミー・ピカードが精神病院にやってくる。どうやら第二次世界大戦中に脳に受けた傷が原因で諸症状を引き起こしているようだが、はっきりとした原因が分からない。そこで、フランスから人類学者で精神分析医のジョルジュを呼び診察を行うことにする。ジョルジュは脳天気で、毎日のようにジミーとおしゃべりをする。周りの医師からは変な目で見られるが、少しずつジミーは心の闇を解き明かしていく...


☆精神分析学入門
本作はジョルジュ・ドゥヴルーによる「夢の分析」をベースに、実際にフランスの精神分析医とアメリカ先住民のカウンセリングを映画化したものです。劇中、ずっとジミーとジョルジュがおしゃべりしているだけなのに、これが妙に面白い。

ところで、あなたには苦手な人はいるだろうか?その苦手な人を避けたりしていませんか?
本作では、ジョルジュの心の冒険を通じて、他者の心の働きを観ることができる作品であります。ジョルジュは、恐怖に悩まされている。それが戦争によるものなのか、人種によるコンプレックスなのか、はたまたその他の要因なのか全く分からない。精神病院の医者は機械的に、彼を分類しようとする。しかし、精神病の治療は機械的に行えるものではない。人の内面を理解する必要があります。

フランスから来たジョルジュは、徹底的にジミーの見る夢の内容を尋ねる。潜在意識が眠る夢から、ジミーの創り出す世界観を理解しようとする、まさにフロイト型のカウンセリングを行っていく。

すると、まず文化的違いが見えてくる。ジミーのいるアメリカ先住民の部落では夢は「未来」を表し、お告げのような意味を持っているが、精神分析の世界において夢は「過去」であるといった違いが見えてくる。そして、段々と対話を通じてジミーはトラウマや罪を思い出す、いや今まで目を背けていたものと対峙することができるようになってくる。

これは心理学、特にフロイトの夢分析に興味ある人にとってとっても面白い作品であった。会話しているだけなのに、なんて面白いのだ。デプレシャンの新作にも期待が持てそうです。
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