おなべ

きっと、星のせいじゃない。のおなべのレビュー・感想・評価

3.6
「人は人生という文章の途中で突然死ぬ」

人は何事も後になって初めて気付く。本作を通じて、普段普通に生活していては気付かないような限られた時間の中にある命の尊さや愛の素晴らしさを身に染みて感じた。

甲状腺癌を患った主人公ヘイゼルとその恋人のオーガスタスの奇跡の恋物語。《シャイリー・ウッドリー》は末期癌患者を主人公を演じ、《アンセル・エルゴート》が恋人役を演じている。本作は《ジョン・グリーン》著『さよならを待つふたりのために』を原作とし《ジョシュ・ブーン》監督によって制作された。

《シャイリー・ウッドリー》の出演のきっかけは何と原作者に直談判。彼女自身が役に対する想いを語りオーディションを受け見事合格。その後は役作りの為にヘイゼルの生活環境や呼吸法を練習し、更にヘイゼルと同世代で同じ境遇の子に会って話を聞き人生について語る事で理解を深めたそう。その甲斐あってか本物の癌患者であると錯覚してしまうくらい迫真の演技だった。

様々な人との出会いや葛藤を経て、絶望の中に希望を見出しながら互いに成長する2人。こんな2人を見ていく内に自分が今どれだけ恵まれた境遇にいるのか…というのは建前で、それよりも愛の尊さや愛の力を痛烈に感じた。思い通りの人生なんてある筈も無く、悲劇は突然訪れる。それを誰よりも実感している2人だからこそ、こんなにも深く人を愛する事が出来たのだと思う。例え共に愛し合った時間は短くても、2人は他の誰よりも濃密で幸せな時間を過ごしたと思うと、自分も些細なパートナーとの時間をも大切にしようと思った。


【以下ネタバレ含む】


●2人にとって特別な意味を持つ「okay」という符牒。時には自身の運命を呪い、時にはお互いを罵り喧嘩する事もあったが、最後には何度も何度も繰り返しお互いの愛を確かめ合うかのように囁き合う2人の表情と紛う事無き真の愛にグッときた…。
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